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2025/05/24

9/2 森にて

森で、楠の下でラゼットがぼうっとしていた。
憔悴したというか、放心状態というか。外は強い風が吹いていたのに、風を避けるでもなくただ樹の下にいて物思いに耽っているようだった。

アムーガで土産にと手に入れてきた酒を酌み交わしながら(とか言って俺は全然飲まなかったのだが)、カトゥの事を話す。
そこへ双頭の大蛇を従えた朧菊さんもやってきて、3人で話した。


 酒と聞いて現れたとしか思えない朧菊さんに、アムーガから持ってきたネップ・カムを振る舞う。
だがこの酒はミハエルさんへのお土産として持ってきたものだから、飲むなら代わりの酒をおくれと言ってみたところ、先の駆け比べの商品であった星酒をくれた。

杯を何枚も持っている(酒を注げば赤とんぼが水面に揺れる美しい杯だった)のを見て、どうしてそこまで酒が好きなのかと聞けば、幼い頃から身近に酒があったのだと言う。

朧菊さんの産まれた村の事情から神として扱われていたらしく、奉納されていた酒を幼いころから飲んでいたのだとか。(更に言えば朧菊さんは種族的にも酒に非常に強く、酔ったことも無いという)
そんな立場にあった朧菊さんが何故今、こうしてペティットに居るのだろうか、このときはラゼットとの話に集中していて聞くのを忘れたが、今度聞いてみたいとも思う。


 ラゼットはカトゥをイェンスさんに返したことを後悔していた。
イェンスさんに"返した"と考え自分を騙していたが、イェンスさんその人からお前はカトゥを”捨てた”のだと
イェンスさんが元々奴隷だと言う事情を分かっていながらそうしたことに傷ついたと言われたようだった。

その上で、「罰則はないだろう」「捨てても構わない命だったろ」と、敢えてそう言われてしまって
ラゼットはカッとなってイェンスさんを殴ってしまったようだ。

そりゃ、放心状態にもなる。


 俺はラゼットに人形を渡した。
カトゥから預かってきた、ラゼットへの贈り物だ。
子供が産まれたときにその成長の無事を願って贈られるもの、カトゥが産まれたときに贈られ、家を離れるときに家族に預けられていたもの。

ラゼットが奴隷商人から連れ出してくれたお陰で今が、無事に成長して家に戻ることが出来た時間がある。
家に戻ったばかりのカトゥが持つ、唯一の大切な物、とも言える物だ。

 取り返しがつくのだとラゼットに報せた。
カトゥのことは終わっていない、致命的なことになってはいないのだと。
イェンスさんのことだって、まだ取り返しがつく。

ラゼットは、自分がカトゥに関わったことはカトゥにとって意味のないことだったと考えていた。
連れ出そうが連れ出すまいが、結果は同じだったのだと。

カトゥには、ラゼットに頼まれてやったことだと言っている。
ラゼット自身、自分が意図したことではないと思っていても、それを隠して、笑顔でカトゥに会いに行かなければいけない。
それはつらいことかも知れないが。
(嫌だと言っても俺は引きずって連れて行くつもりではある)




お相手頂いたキャラクター… ラゼット 朧菊

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2013/11/26 ユベルティ Comment(0)

8/27 ペッラ・メル・バムにて

俺は仔猫ちゃん(ニ・カトゥ・アラデメヤナ)と共に、ペッラ・メル・バムへと来ていた。
カトゥの家族は今何処に居るのか?
一緒に暮らすことはできるのか?
その答えを探しに。

道中、荷車を引いた現地の人と思わしき山猫の獣人お爺さんに出会った。
この頃には俺とカトゥの意思疎通も幾らかコツを掴み、辞書への頼り方も慣れが見えてきていて挨拶もスムースではあったが
幸運なことに、このお爺さんは共通語を話すことが出来た。

 聞けば、お爺さんも元のメル・バムの人であり、火災のときにペッラ・メル・バムへと移住してきたのだと言う。
カトゥと面識があったらとも思ったが、カトゥも小さかっただろうし覚えていなかったようだ。

このお爺さんにも、非常に親切にして貰った。
色々なことを教えてくれ、案内をしてくれただけでなく、カトゥにも優しくしてくれたし、ネバネもくれた。
南の国はとても温かい、そんなところへ妙な制度を持ち込むのは大抵他の国だ。
種族が違うからと差別をしているから、出来る事なのだろうが。


 カトゥの両親は火事とその後のゴタゴタで亡くなってしまっていたが、兄弟達はペッラ・メル・バムへと移住しており、そのうち何人かは結婚をしていた。(カトゥは4女だった)
兄弟たちはカトゥの帰りをとても喜んでくれたし、結婚をして生活が安定をしているお姉さんの家でカトゥも一緒に暮らすこととなった。

「こんな良い格好をさせてもらって」
とは、再会をした後のお姉さんの言葉だが、このときに初めてジュリエッタさんからの贈り物にはこういった意図もあったのかと気付かされた。
急にカトゥを連れてきた俺のことを疑うこと無く受け容れて貰えたのも、このお陰だったと言える。


 それから数日の間は、男手の必要な仕事を手伝わせてもらった。
カトゥが新しい……此れから暮らしていく環境に馴染めないこともあるかも知れないし、ひょっとすると、お姉さんの旦那さんに疎ましく思われたりしないかと思って、念の為に滞在をした。

礼にと、来客用のティーセットやら何やら、明らかな家財道具を持ちだされたのはとても困ってしまうことだったが、受け取ることも大事なことだ。
それに俺だけの力で此処まで来られた訳ではない、報酬は分ける必要がある。


 今回の件は、とても幸運なことだった。
元の故郷や両親は失われていたにしても、待っていてくれた人が、受け容れてくれる人が居た。
目的の場所に辿りつけなかったり、全てが失われていたり、追い返されたりしても、不思議では無かったのだから、これ以上望むべくもないことだ。

カトゥは、本来あるべき時間に戻った。
奴隷商人や俺達に奪われていた時間を取り戻すことが出来た。

だが、俺はこの子を軽視していたのかも知れない。
ラゼットへとカトゥから人形を託されたときにそう思った。

元々は、奴隷商人から逃げ出そうとしていた子なのだ。
交渉のためとしていたラゼットからは分からないが、俺からは逃げようと思えば逃げられたはずだ。
それでも付いて来て、つらい現実に跳ね返されるかも知れないと知りながら此処まで来てくれたことは
カトゥがただ大人に振り回されているだけの子供ではないことを示していた。





お相手頂いたキャラクター… 山猫の獣人

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2013/11/26 ユベルティ Comment(0)

8/24 南の島にて

仔猫ちゃんを連れて南の島へと旅に出た俺は、まずは情報収集のためにと喫茶店に来ていた。
俺が店主に辞書を渡し、「この言語と共通語の両方が分かる人物を知らないか」と尋ねると、俺と仔猫ちゃんを店に待たせたままで席を外してしまったので、そこで待つことにした。
そのときばったりネージュと会って…。


 ネージュは依頼で此処に来ていたようで、この島の北の方にある現地のケーキをペティットへと持ち帰るのだと言う。
お互いの旅の訳を喋った辺りで、店主とは別の、青い翼(南国に居るオウムなんかのような色鮮やかなものだ)の鳥獣人の店員が店の奥から出てきた。
店主の代わりに出てきたこの男は仔猫ちゃんの言葉が分かった。
(というかこの時点で気付かなきゃいけなかったんだ、俺は馬鹿だな)


 結論から言ってしまえば、此処で仔猫ちゃんの名前と、その故郷の名前が分かる。
名をニ・カトゥ・アラデメヤナ 故郷の名をメル・バムと言った。

故郷の名が簡単に分かったのは、ネージュの行ってきた「北の方」というのがペッラ・メル・バムで
そこで貰ってきたというクッキーをカトゥが覚えていたためだ。

ペッラ・メル・バムは「次のメル・バム」という意味で、2年前に大きな火災があったメル・バムから移り住んだ人達による集落だ。
カトゥは火事や移民の事は知らなかった。だが場所が変わっても文化は直ぐには変わらない、元の「メル・バムの味」を覚えていたということだろう。

そのため、ネージュと会うこと無く闇雲に故郷を探していたらきっと、元のメル・バムへと向かい
そこで初めて火災のあったことを知ることになっただろう。
かなりの時間短縮に繋がった筈で、非常にラッキーなことだ、何かお土産を持って行きたいと思う。
(会計も一緒で良いと言ったのに自分で払っていたし!とはいえ、行ったことのある場所のお土産なのだが)


 ガイドを頼みたくもあったが、依頼でペティットに戻らなければならないネージュが店を去った後、俺は店員を詳しい話をした。(火災のこと、奴隷のこと)
ネージュが居なくなってからしか出来ない話ではなかったが、店員を含めた俺達はそれとなく、"そういう話"を伏せてしまっていた。
ネージュも踏み込んで来ることが無いからこそ(それは礼儀正しいことだ)、自然とそうなってしまうだけだが……。
(実際、現地へのガイドから、家族の様子を俺が下見している間カトゥを見てもらうとか、手を貸して貰いたいことはいくらもあった)

 店員は非常に良くしてくれた。
ペッラ・メル・バムのことだけでなく、この島では未だに奴隷制度の色が強いこと、店主が保安官を呼びに行ったのではないか、ということ(お陰で準備をしておけたので、むしろ協力を仰げる結果となった)、カトゥを一時なら預かってもいいなど。

甘いコーヒーと、ネバネのパンケーキも美味しかったし、島を出る前に礼に来たいと思う。




お相手頂いたキャラクター… ネージュ 青い翼の男

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2013/11/23 ユベルティ Comment(0)

8/20 ペティット港にて

女の子は荷物が多いもの。
それを普段、俺のような男が感じることは少ない。
せいぜい、支度に時間が掛かるとか、そのくらいのことしか実感しない。

だが、旅となると話は別だ。
この仔猫ちゃんについても例外ではなく……っていうかマジで多い。

おめかしして、お気にの小物をぎゅっと詰めたカバンを持ってというのは、仔猫ちゃんは大層楽しんでいたようで、この心憎い贈り物は俺が想像していた何倍も何倍も素敵なものであったのだと、このとき感じた。

俺用のポケット辞書付きだなんて、心憎いにも程がある。
ホスピタリティ!

とまれ、こういったところがあの人の人徳と言うのか、不思議な魅力の元、或いは一部なのだろうと思うことだ。
俺が借金をしているというのに、演出を快く許し応援してくださるミハエルさんにも感謝しきりである。


 俺は生き物に名前を付けるというのが非常に苦手だ。
優柔不断だからというのもあるが、特に、他に名前がある者に対して新たに……というのはとても気が引ける。
以前、それで苦い失敗をしてしまったこともまた、俺を臆病にさせていた。

ペティットから出発する段になって、仔猫ちゃんがラゼットの事を気にしていた。
それも当然のことで、奴隷商人からこの子を連れ出したのはラゼット、俺はラゼットに頼まれているとして、この子に説明をしているからだ。(通じないなりにだが)

実際のところは、ラゼットは俺が再誘拐したこともまだ知らないのだろうが……俺は、またきっと会える、俺が連れて行くからと言って、船に乗せ……


 そこに、ルトナさんがやってきた。
通りかかったのではなく、なんと出発のついで見送りに来てくれたのだと言う。
ヘラジカの角亭に居たときに、今日出発するのだとは話したが、まさか見送りに来てくれるとは思わなかった。

ルトナさんも俺も旅人、見送りのない出発なんて、すっかり慣れてしまったことなのに。
旅の守りとして、トルコ石をくれた。
戻ってきたらまたプチ・リブレとして公演をしよう、芸術祭という舞台で。
そう約束をして、それぞれの旅へと出発をする。

最近「ただいま」を貰ったと思ったら、今度は「いってらっしゃい」を貰ってしまった。
こんなに自然に受け容れられる言葉達があるなんて。




お相手頂いたキャラクター… ルトナ

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2013/11/22 ユベルティ Comment(0)

8/18 夏祭り会場にて

仔猫ちゃんを連れ、リフェリスと約束の散歩に出ていた。
天候は今ひとつであったが、海辺についた辺りで夏祭りのことを知り、会場へと向かった。

夏祭り会場ではルトナさんがゴールドフィッシュ掬いなる露店を出していて、同じく祭りに来ていたヨハネやギガトールさんと共に、ゴールドフィッシュ掬いに興じた。


 ルトナさんは旅する先々、祭りのあるところに現れてはこういった商売で路銀を稼いでいるのではないかと思うほど堂に入った様子で屋台の兄ちゃんとなっていた。(強面の知り合いもいらした)

露店のゲームと言えど換金も可能で、魚によって特徴もあり、ポイも数種類用意されている。
そして露店の醍醐味とも言える店主との駆け引きの楽しめる店だった。
ルトナさんはエルフ(ハーフエルフ)だが、非常に人間くさいので育ちは人の街なのだろう。


 ヨハネは実にお祭を楽しんでいた。
一緒にゴールドフィッシュ掬いをやったが、ひたすらに最も難易度の高いことに挑戦し続けていて、最後にはそれを成し遂げてしまった。
ヨハネは中々運の良いところがあり、しかもその自覚があるタイプと言うか。

途中までは何度も何度も失敗して、落ち込んだり奮起したりといった様子はとても、その歳らしいと言うか
非常に無邪気で、見ていて楽しいものだった。
(なんだか親近感が湧いたのか、仔猫ちゃんもつられて楽しそうだった)


 ギガトールさんもお祭り好きなもので、ゴールドフィッシュを教会へのお土産にと掬っていた。
俺が仔猫ちゃんの故郷を探しに南の方へ行くと聞くと、俺に人探しを依頼しようとしてやめた。

何故口にしかけてやめたのか、俺が、探し人はどんな人なのかと問う前にさっさとその場を離れてしまう辺り、俺が適任でないと思ったと言うよりは何か別の事情があるような気がする。
踏み込むのは少し野暮ではあるが、南の島で「2mの神父を知っているか」と聞いて引っ掛かりでもしたら問うてみても良いかも知れない。


 リフェリスは俺が仔猫ちゃんを攫ってきたことについて、最初のうちは結構心配(俺がどうかしてしまったのではないかという意味で)していたのだが、話を聞くにつれて心配事は遷移していった。

俺が「もしかすると仔猫ちゃんの帰る家は無くなっているかも知れないけれど、それでも連れて行く」と言えば誰もが「そのもしかすると、だったらどうする?」と俺に訊く。
リフェリスもそうだった。

俺は決まって「他に手段が無さそうであれば、不本意ではあるが生活を共にする」というように答える。
別にこの子と暮らす事が不快ということではないが……
そこで時間が経てば選択肢が増えるのだと、自立出来るようにしてやればいいのだと気付かせてくれたジュリエッタさんには頭の下がる思いだ。


 リフェリスも何をか思うところがあったようだけれど、口にはしなかった。
特に、そうなった場合はペティットを出ると言ったことを気にしていたようだったが
幾ら落ち着いたとはいえ、イェンスさんの居る街で堂々と二人して生活している訳にはいかない
どうしても決着を付けてペティットでの生活を勝ち取らなければならないほど、仔猫ちゃんにとってペティットは重要な街ではないのだから。

このとき初めて聞いたのだが、リフェリス自身が転居を行うことも関係していたのかも知れない。
お兄さん(兄が居るというのも初めて聞いた!純エルフだそうだ、異母兄弟だか何だかなのだろう)がこの街に来て店を持つというので、そこで一緒に住み、店の手伝いをするとのことだった。


 俺はリフェリスに「何かやりたいことは無いのか」と聞いた。
というのも、リフェリスの歳に関する話を聞いてからというもの、俺はその「やりたいこと」を成し遂げさせてやりたいと思ったからだ。
俺はやりたいと思ったことは早速やってみる主義だが、リフェリスはどうも(寿命の割にというとブラックジョークなのだが)少しのんびりしているので(良いところでもある)、よーしここは1つ俺が、という恒例のお節介だ。

聞くだけタダ、出来そうなら協力しようと思ったことだが
リフェリス曰く「やりたいことというか、できたら良いなということならある」だそうだ。

まあ、こういう事を急に聞かれると中々恥ずかしいものだし、また聞いてみようと思う。




お相手頂いたキャラクター… リフェリス ルトナ ヨハネ ギガトール

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2013/11/22 ユベルティ Comment(0)

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