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- Newer : 9/2 森にて
- Older : 8/24 南の島にて
俺は仔猫ちゃん(ニ・カトゥ・アラデメヤナ)と共に、ペッラ・メル・バムへと来ていた。
カトゥの家族は今何処に居るのか?
一緒に暮らすことはできるのか?
その答えを探しに。
道中、荷車を引いた現地の人と思わしき山猫の獣人お爺さんに出会った。
この頃には俺とカトゥの意思疎通も幾らかコツを掴み、辞書への頼り方も慣れが見えてきていて挨拶もスムースではあったが
幸運なことに、このお爺さんは共通語を話すことが出来た。
聞けば、お爺さんも元のメル・バムの人であり、火災のときにペッラ・メル・バムへと移住してきたのだと言う。
カトゥと面識があったらとも思ったが、カトゥも小さかっただろうし覚えていなかったようだ。
このお爺さんにも、非常に親切にして貰った。
色々なことを教えてくれ、案内をしてくれただけでなく、カトゥにも優しくしてくれたし、ネバネもくれた。
南の国はとても温かい、そんなところへ妙な制度を持ち込むのは大抵他の国だ。
種族が違うからと差別をしているから、出来る事なのだろうが。
カトゥの両親は火事とその後のゴタゴタで亡くなってしまっていたが、兄弟達はペッラ・メル・バムへと移住しており、そのうち何人かは結婚をしていた。(カトゥは4女だった)
兄弟たちはカトゥの帰りをとても喜んでくれたし、結婚をして生活が安定をしているお姉さんの家でカトゥも一緒に暮らすこととなった。
「こんな良い格好をさせてもらって」
とは、再会をした後のお姉さんの言葉だが、このときに初めてジュリエッタさんからの贈り物にはこういった意図もあったのかと気付かされた。
急にカトゥを連れてきた俺のことを疑うこと無く受け容れて貰えたのも、このお陰だったと言える。
それから数日の間は、男手の必要な仕事を手伝わせてもらった。
カトゥが新しい……此れから暮らしていく環境に馴染めないこともあるかも知れないし、ひょっとすると、お姉さんの旦那さんに疎ましく思われたりしないかと思って、念の為に滞在をした。
礼にと、来客用のティーセットやら何やら、明らかな家財道具を持ちだされたのはとても困ってしまうことだったが、受け取ることも大事なことだ。
それに俺だけの力で此処まで来られた訳ではない、報酬は分ける必要がある。
今回の件は、とても幸運なことだった。
元の故郷や両親は失われていたにしても、待っていてくれた人が、受け容れてくれる人が居た。
目的の場所に辿りつけなかったり、全てが失われていたり、追い返されたりしても、不思議では無かったのだから、これ以上望むべくもないことだ。
カトゥは、本来あるべき時間に戻った。
奴隷商人や俺達に奪われていた時間を取り戻すことが出来た。
だが、俺はこの子を軽視していたのかも知れない。
ラゼットへとカトゥから人形を託されたときにそう思った。
元々は、奴隷商人から逃げ出そうとしていた子なのだ。
交渉のためとしていたラゼットからは分からないが、俺からは逃げようと思えば逃げられたはずだ。
それでも付いて来て、つらい現実に跳ね返されるかも知れないと知りながら此処まで来てくれたことは
カトゥがただ大人に振り回されているだけの子供ではないことを示していた。
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