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依頼で古城跡に来ていた。
遥か昔の闘いによって朽ちてしまった城、ないし砦なのだが、今となっては魔物の住処だ。
そこへ捜し物の依頼で来ていたのだが、そこで出会ったのは魔物でもお化けでもなく賞金首で。
俺はどうやら、賞金首であるリヴォが潜伏していた場所にうっかり来てしまっていたようだ。
不意打ちを受けるも、「捕まえに来た訳じゃない」というのを信じてもらえて難を逃れることができた。
(実際に捕まえに来た訳でなくとも、顔を見て、賞金首だとわかった時点で捕らえたくはあったが……嘘は吐きたくなかった)
それに、ヨハネのことがあったからだ。
ヨハネはリヴォのことをどうにかしてやりたいと思っているようで、血に気をつけろとも言っていた(そのログはどこかへ行った)。
此処で捕えてしまえば、もしかしたらそれで終わってしまうのかも知れなかったが
面倒そうな事情が垣間見えるだけに、ヨハネがそれに挑む姿を見たかった。
そんなことのために賞金首を野放しにするのかとも思ったが、ヨハネの頑張りが良い結果を招くかも知れないし、俺は目の前のリヴォが―ちょっと勢いあまりがちなところがあるにしても―単なる悪人には見えなかった。
ヨハネについてどう思うかと聞けばクソ食らえだと、少しでも良い人だと思ったのなら勘違いだと言っていたが、ヨハネは中々どうしてそれで引き下がる奴ではないと思い知る結果になってくれればなと思う。
あと、念の為に言っておくが、パンツは見ていない。
川沿いの遊歩道で魔法の修練をしていると、ナツメさんが通りかかって少し話をした。
気功の話(寺生まれは凄いかもしれない)などをしていると、川の傍にリコスが居るのを見つけて。
ナツメさんは近頃、傭兵以外の仕事で街の外に行くことが多いのだという。
舞や刺繍などといった戦いではないこと、元より料理も得意であったナツメさんは家事全般というのか、そういった事も十二分なレベルのものを持っているのだろう。
ともすれば、高貴な生まれの者のように幼い頃からそういった厳しい修練を積んできたのかも知れない。
セツナちゃんをレインさんのところで気功を習わせて貰っているなどといったところも、きっと自分がそうであった為に、子に何かを学ばせるのは普通のことだと思うからなのかも知れない。
(と、思ったらセツナちゃんの教育に熱心なのは叔母さんの方のようだった)
そしてナツメさん自身についても、傭兵として各地を旅した経験が役に立ったと口にしていた。
この件に関して俺の予想はことごとく外れたようだ。
ナツメさんは再婚を半ば諦めてしまっているようではあるが、街を離れがちな性分であるという自覚があり、街に不穏な影のあることを心配するのなら、セツナちゃんを守ってくれる人(叔母さん以外に)が居るのは良いことだと思う。
といって、俺があれこれいうことでも無ければ、そうしようと思って思い通りに行く事でもない。
また修練会をしようと言って、この日は別れた。
リコスが川の傍に蹲って、落ち込んでいる様子だったので俺達は声を掛けた。
学院でボヤ騒ぎ(?)があったそうで、そのときの事がショックだったようだ。
何でも、肝試しをしていたら人魂のような炎が襲ってきて、一緒に居た子供の足を焼いたらしい。
それが魔物によるものなのか、何者かによる魔法なのか。
その正体は分からないが、中々恐ろしいことだ、学院でも警戒が強くなることだろうが
犯人(人とも限らないが)の目的は何だったのだろうか?
川で修練をし、虫の声を聞いていると森を探検中のポーアさんがやってきた。
2人で話をしていたところにネージュがやってきて、3人で街へ戻りながら話をした。
探検をしていたというポーアさんのセンス・オブ・ワンダーを試すゲームを楽しんだ。
どちらの手にコインが入っているか?というような単純なものだが、それは完全に勘でしか答えられない。
冒険者にとっては重要なことだ、ダンジョンで右の道を行くか?左の道を行くか?それによって生死が分かれることもある。
見事アタリを引いた、素晴らしいセンス・オブ・ワンダーを持つポーアさんへ「とっても香り箱ミニ」をプレゼントした。不思議な不思議なアムーガ土産だ、エスニックで海産系の。
そして、虫の声を聞いて、すっかり秋の訪れを感じていた俺は、ポーアさんに夏の思い出を聞いてみた。
スイカ割り、キャンプファイヤー、夏祭りとポーアさんは夏を中々満喫していたようで、夏祭りでは
ネージュと一緒に浴衣を来て楽しんだと言う。
2人の浴衣姿を見られなかったことはかなりの損失だと見て間違いがない、全くもって。
(ポーアさんはひまわり柄、ネージュは百合柄だったそうだ!ガッデム!!)
その後は、今やっていることをどうして始めたのかというような話をした。
珍しくこんな話をしたような気がするが……ポーアさんは幼い頃から絵が好きで、本格的に、自覚をして絵を描きたいと思ったのはペティットへ来た頃、3年前くらいからだったそうだ。
俺が冒険者をしていることについて、これだけ興味を持って貰えるというのも珍しいことだが
何よりポーアさんが話を楽しそうに聞いてくれるものだから、ついついと言った感じで舌が回ってしまう。
ポーアさんに冒険の話をすることで、俺自身が冒険をするのが好きになるというのを実感した。
それはきっとポーアさんの才能だと思うし、多くの光景を絵に残したいと思うことと共に、強い感受性の表れのように感じる。
あと、聞き上手は素敵なレディーとしてこの上ないスキルの1つだ。
虫歯治してあげたいね。(残念なことに虫歯はないらしい、ポーアのお婆さんはとても良い子にポーアさんを育てたようだ)
噂をすればネージュだったが、噂をしてもポーアさんと百合っぷるにはなっていないようだった。
(それもそうだ)
カトゥのことを話し、お土産(というか僅かだがお礼の品)を渡した。
カトゥが家に戻れたことについてとても喜んでくれたが、カトゥが居なくなって俺が寂しいのではないかとネージュは俺に訊いた。
確かに少し寂しくもあったが、良い別れ方をしたから、清々しい気持ちでもあった。
しかし、顔にでも出ていたのか?
ソレユが居なくなったら1周間はお部屋から出てきそうにないネージュに言われるなんて。
(ソレユ君は以前、コルト君という名前であったが、コルトは仔馬を示す名前であるため、すっかり一人前となった今では相応しくないとして、ソレユ君というちゃんとした名前を貰ったようだった。太陽の意だろうか?)
カトゥのことでのお礼にと、菊の刺繍が入ったハンカチを渡した。(メル・バムでは菊や蓮の花の柄が多いのだ。ティーセットは蓮の柄であった)
ネージュはとても感激してくれた……ようだったが、それがどうしてなのかは、今ひとつ分からなかった。
贈り物を貰い慣れてない、という訳では無いらしい。(そもそもネージュなら毎日だって贈り物を貰えてしまうだろう)
カトゥが大事なものをくれたから……それはラゼットだ。
菊の柄のハンカチがとんでもなく欲しかった?これかも知れない、思い入れがあったのかも。
ともかく、以前ネージュのことで良い点だと感じたこと
(プレゼントを貰ったとき、喜べばまたプレゼントをして貰えるという返報性うんたらかんたら)
を超越したものを感じ、俺は、そんなに喜んでくれて有難う、と頭に疑問符を浮かべながら言うことになった。
それはさておいて、夏祭りを期にポーアさんとネージュが(こう並べるとポーアをさん付けでネージュを呼び捨てなのは何となく妙な気分だが、此れで慣れたものだから仕方ない)仲良くなったのはとても良いことだ。
マヨヒガのことを話したり、絵を描いたり、見せてもらう約束をしたり、ポーアさんが初めて馬に乗ったり。
ソレユに乗せてもらうポーアさんと、乗馬の指導をするネージュを眺めていると、今日はとんでもなく良い日だなと思うことだった。
そこは「やぶさかでない」じゃなくて「穏やかじゃない」だろ!
というツッコミを待っていたのだが、割りと誰にも気付いてもらえなかった。
セシルさんとベリアが出所後トークで盛り上がっていたようだった。
二人共自らに架した鎖について思うトコロあるようだったが、俺が来た頃にはというか、俺が来たことでその話は区切りとなった。
教会ではそういう話は穏やかでないのか、それとも教会だからこそなのか。
どちらにせよ、2人はきっと教会の教えに沿った道を選んだわけではないだろうから、きっと穏やかでないのだ。
その後、セシリアがやってきた。
セシルさんの事は亜人狩りの頃、話には聞いていた。
便乗犯の1人で賞金稼ぎ。
今は、稼いだ賞金を街に寄付することを条件として自由の身になっているという。
亜人狩りのとき、セシリアと何かあったのだろう。
セシルさんを前にしたセシリアは憤りをなんとか抑えているといった様子であり、俺には「大丈夫だ」と言ってくれたものの、何か弾みさえあれば……と言った様子だった。
だが、そんな様子のセシリアに向かってセシルさんは歩み寄り、詫び、あまつさえその目の前で深く頭垂れた。
セシリアが、やろうとさえ思えばその首を切り落とすことが容易なほどに。
それは完全に相手へと自分の命を委ねるような謝罪ではあれど、この状況では非常に豪胆なことであり
俺は冒険者として、そのセシルさんの強さを見て取ったが、ともすればセシリアを精神的に追い詰めかねないことだと思った。
実際にセシリアはその姿を見て、セシルさんが完全に反省をし屈服したものと見て安堵するどころか
増々湧き上がる感情……こうまでされても相手を許せない自分に対する憤りもあっただろう……に苛まれているようだった。
間違った気持ちではないと言葉を掛けるには、俺は事情を知らなすぎる。
セシリアは強い。
目的を達成しようという強い意志を持っている。
だが、それは同時に弱さでもある。
人は弱さを強さに変えることが出来るが、違う方向から見れば、それはやはり弱さだ。
今のセシリアには、きっとそのことに寄り添ってくれる人もいる。
俺に出来る事と言えば、ギガトールさんからコーヒーを貰ってくることくらいだった。
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