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教会へと人形を持ち込む。
この西洋人形は悪霊に取り憑かれて(そのものだったとも思われるが、詳しいことは知らない)いたので、祝福を受けた刀で斬ったのだが…。
動かなくなったから大丈夫かどうか、その場にいた人間には分からず、教会へ持って行ってみよう、という事になったのだ。
教会では、ギガトールさんが対応してくれた。
夜間だったのを含め、有難いことだ。
人形の気配を感じてか、はたまた偶然にか、ヤサも現れて…。
悪霊はすっかり人形から抜けていたようで、ヤサも家に帰ることが出来た。
屋敷の淀んだ空気を浄化しようとか、庭を整備し埃を落とそうとか…。
ギガトールさんと俺はやる気になっていたのだけれど、ヤサが家に戻った途端に綺麗になって言って驚いた。(その理由は後述する)
人形はギガトールさんが直してくれて、ヤサに返した。
ギガトールさんが言うには、ヤサはブラウニー(座敷童子とも言うらしい)という家を守る霊だということだ。
「家に帰りたい」「家を守りたい」と言うヤサ。
悪霊に家を乗っ取られた後も、その事を一人街を彷徨い、人見知りながら周囲に伝えて助けを求め、見事に家を取り戻したのだ。
その意志を為す助けになれた事を嬉しく思う。
ヤサの家にはやはり誰か住んだほうが良いのではないかとか、色々と心配事もあったのだが、ヤサが戻り綺麗になった家を見えると心配は要らないように思えた。
神霊(?)としての力は十分にあるようだ、屋敷を探索したときにと言った為か、俺の顔の引っかき傷も治っていた。
此れからもヤサはこの屋敷を、父親との思い出の詰まった家を守っていくのだろう。
偶に、遊びに行くもの良いかも知れない。(後日、悪戯好きの子供の霊が居着いたと知り、大いに笑った。)
日中、教会にてヤサの事を調べると、先日サヤが此処を訪れていた事がわかった。(ぶたれそうになったと言うシスター、何があったのだろうか)
武器に祝福を授かり、聖水を得たサヤ。
「呪いの館」と呼ばれる場所に踏み込もうとするだろうとは、直ぐに予想が付いて。
相変わらず傷の状態は思わしくなかったけれど、お守り代わりに聖水を一瓶頂いて「呪いの館」こと、本城康弘氏の屋敷へと向かった。
ちょうど、サヤが屋敷の門を破ろうとしているところに出くわし、共に探索することとなった。
お屋敷には落とし穴などのブービートラップが仕掛けられていたり、所々、侵入者を脅かそうとしてくる(鍋が落ちてくるなど)などの悪戯が仕掛けられていた。
―この間、通りかかったヨハネと合流したり、サヤに借りを作ったりしたが。
サヤは訓練されたような行動力と速さを持っている。
目的意識の高さと迷いの無さも俺に無いところだろうか。
そしてお互いの中に慎重さと大胆さを見るからこそ、結果として自分の慎重さと大胆さを引き出せるかのようだ。
馴れ合う気はないというサヤ。
俺は今までどおり、好き勝手にすると伝えると、拒みはしなかった。
それで十分だ。
ヨハネは通りかかっただけだったようだが、協力してくれた。
俺は、彼がクラスとしてのシーフに適していると考える。
ヨハネは未だそのつもりは無いようだが、悪戯や盗みで鍛えた身軽さや手先の器用さは、きっと冒険者として活躍するにも役に立つはずだ。
知らぬ間になったという賞金首、知らないところで人の恨みを買っているというのは危険なことだ。
そして、知らないどころか恨みも無い人から狙われる事になる。
俺はヨハネと、(もしかすると俺の知り合いにあたる)冒険者や賞金稼ぎが戦うなんてことは起こって欲しくない。
ヨハネは捕まらなければ大丈夫と考えているのだろうか、「振り落とされたら冒険者として」…彼の中の何が、今の立場に留まらせるのだろうか。
数々の悪戯と脅かしを越えて屋敷の中を進み、ヤサのものと思われる子供部屋で、悪霊の憑いた人形を破壊する事が出来た。
結果だけ言えばこの人形そのものであった悪霊とやらは、ただの悪戯好きの子供の幽霊であったのかも知れない。
ともすれば。橋渡しの出来る者が居たならば、或いは解決を急いだり、悪戯の不気味さに焦らなければ。
この悪霊と呼ばれたものは、ヤサの良き遊び相手に成り得たかも知れない。
しかし、「向こう」というものがあるとするならば、この霊もそっちで遊び相手を見付ける事が出来るだろうか。
それは家に帰り着いたヤサかも知れないし、他の誰かかも知れない。
ともあれ、「ヤサを一刻も早く家へ帰してやる」という目的は、一先ず達成されただろうか。
とりあえず、「呪い」を「祝い」に書き換えなくては夜も眠れない。
廃教会周辺の人家では、失踪事件が何件か起こっていたようだ。
恐らく、例のグールもどきと関係のある事だろう。
調査の依頼が張り出されるのも、時間の問題だ。
情報収集の帰り、街の広場に立ち寄るとクラフさんと、東洋風の格好の女の子がベンチに座っていたのでお邪魔する。
クラフさんは夜勤の途中のコーヒーブレイクだったのか、二言三言しか交わせなかったものの、女の子の方とは幾らか話が出来た。
この子はサヤと言って、巫女をやっているらしい。
巫女というと、神官のようなもの(の中でも主に交霊(降霊?)とかをやっているのだったか)と記憶しているが、聞くに、冒険者と似たようなものだという。
冒険者(クラス:巫女)といった感じだろうか。
今日話した感触では、実に現実的な眼を持っているようだ。
慎重かつ大胆というか、中々戦うものとして好ましいものを持っている気がする。
しかし、冷静に見極める眼を持っていながらにして孤高なのはどういう訳か。
フランセットのように自分に絶対の自信があり、そのプライドから、「不可能」という単語が辞書に無い為に自分で全てやる、というタイプでもない。
得物は刀だが、少し装備に不安があるようだった。
先立つものも無いようで、最近この街に着いたのだろうと思う。
廃教会の事を話すと、興味を持ってくれたようだったが…。
そこに、幽霊の少女が現れた。(最初、幽霊だと思わなくて随分驚いたが)
幽霊の子はヤサ(サヤと似ていて面白かった)と言って、サヤと知り合いのようだった。
サヤは割りと気の強い方なのだが、ヤサの前ではたじたじだった。
小さい子に優しいんだなと言うと、怒られたが。
サヤから聞くに、ヤサの家におかしな悪霊が取り憑いていて(その大元は「人形」であるらしい)、ヤサは家に帰れなくなっているそうだ。
慈善事業でやっている訳ではないとか、友達という訳ではないとか、色々言っていたのに。
ヤサが「依頼にはお金が要るのか」と聞いた途端、「その必要は無い」と否定したサヤ。
目の前で困っている人を放って置けないのだろうか、そも、そういった性質でなければ、俺の様子を見て背負い込み過ぎではと思う筈も無いだろう。
好きでやっている事だから、と言う。エゴという物を分かっているのかも知れない。
助けてくれと涙を流すヤサを勇気付けるサヤの姿は強く美しいものだった。
気概のある子だ、芯が通っていて言葉の端々に何か越えてきたものを感じさせる。
最後まで、友達という単語に流されなかったことも。
その気概が何処からくるものなのかは、まだ分からないが…。
果たして、そんな姿を見て協力しないと言う事があるだろうか。
俺も出来るだけの事をすると言い、別れる。
帰り道の空は星が美しくて、小夜の言うように中々寝付く気になれなかった。
雨の気配のする夕方。
一昨日から続いていた、具無しバター無しのサンドイッチみたいな依頼の帰り、くだんの廃教会に立ち寄った。
雨が降ってしまえば、またこの教会の屋根を借りることになってしまうだろうとは分かっていたけれど。
どうせ降るだろうと思っていたので、泊まろうと思って寄った。
それに、墓地の様子を見ておきたかった。ゼムアートの言うように
「よどんで」いるかも知れなかったから。
墓地は当然のように荒れていて、いや、荒らされていて、土もなんだか掘り返された後のようだった。
「よどんで」いるかどうかは分からなかったが、墓石を起こして回っていると雨が降ってきたので教会内に移動した。
そこで、一昨日ノエルさんと出会ったように、雨宿りに訪れていた「空飛ぶペンギン道化師」ことプリスシラと出会った。
肩書きについてはよく分からなかったが、とにかく道化師なのだろう。
この間は手品師と出会い、今日は道化師、この教会はあの手この手で俺を化かそうとしているのかも知れない。
自己紹介などしていると、不思議な事が起こった。
他に誰も居ない筈(確認はしていない)なのに、教会の鐘が鳴った。
そして、その音に呼び寄せられるように、グール達がやってきた。
その後、結果としてはプリスシラと、通りかかった(?)コトリさんと共に廃協会から脱出する事が出来たのだが…。
道化師というプリスシラは、ナイフ投げが上手かった。ブーメランを投げるのもだ、投げるのが得意らしい。空飛ぶペンギン道化師、物を飛ばすのも上手だ。
コトリさんは飛行術を掛けてくれて、そのお陰で楽に脱出が可能だった。
グール(?)は30体は居たようで、マトモにやっていたら身が持たなかっただろう。
グールもどき。と言うのもコトリさんの言うには、この魔物達はアンデッドとはまた違うものとのことだ。
魂の無い、体だけの見せ掛け…。
そんなものが何故現れて俺達を襲ってきたのかは、分からなかった。
墓地の死体が使われていたのは確かだろうが、ずっと生身に近い姿の者も居り、「よどみ」とは関係が薄そうだった。(この結果としてよどむ事もあるだろうが)
戦闘の際に噛まれたところが痛む。
傷そのものは大した事が無くすぐに消毒したのだが、何か病気か呪いかを持っていたのだろう。治るどころか悪化の様子を見せている。
少し様子を見よう。
ダートラディアさんの店が新装開店していたので立ち寄る、そもそも常連という程には来ていなかったのだけれど…新装開店という響きが好きだ。(移転も新装開店のうちだよね?)
買い物をしながら話をする。最近暴れていなくて欲求不満だ、なんて不良のような事を言うダートラディアさんに、フランセットの事を話した。
強いと聞いて興味を持ったようだけれど、女の子相手では少しやる気に支障が出るらしかった。
どちらかといえば、同性よりも異性とデートしたいのに近いのではないか、と俺は推測したけれど、ダートラディアさん自身も上手く言葉に出来ないようだった。
途中、お客としてゼムアートがやって来た。
誘拐事件の打ち上げのとき一緒にドタバタした記憶があるけれど、それきりだったので、お互いに「見たことあるな」という感じで「お久しぶりです」を。
自己紹介をして、墓守人だと知った。
消毒薬と火傷に塗る油…両方「早めにお使いください」という奴で安くなっていた。火傷に効く油に火をつけたら火傷するだろうか…を買い、その後、薬効シロップの試飲をさせて貰う。
その間に、ゼムアートに墓守の仕事について少し聞かせてもらった。
夏の間は忙しかったのかと聞けば、やはりそのようで。
お墓は、参る人が居なければ街の治安が悪くなるように「よどむ」事があるのだとか。
管轄外のお墓であっても仕事をし、荒れていれば見過ごせないというのは熱心な事だ。
困っている人あればの冒険者と、困っているお墓あればの墓守、そんなところは共通しているのかも知れない。
専門家として力を貸せる事があれば、と言ってくれた、頼もしい事だ。
(色んな薬…体にイイ奴…を買い込んでいるような辺りは頼りなげとも言えるが、専門とはまた別だ)
季節のシロップは薬用効果があるにしては美味しくて、喉に良さそうなものを買った。
四枚羽の鴉の件をダートラディアさんにお願いして店を出る。
緘口令は敷かれているものの、といって誰にも話さずに行える調査でもない(専属チームなどというものは無いのだから)。
酒場で熱心に聞き込みといけないのならば、こうして情報が拾える場所を増やすのは手段の一つだろう。
にしてもあのルシアンという名の白い鴉は可愛い。ダートラディアさんも可愛がっているようだったのがまた。
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