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リタ婆さんとリコス、そして俺の3人は学院に来ていた。
学院の者を主とする、この「繋がる夢」の対策チームがメイアの体を預かり、解呪の準備を進めてくれていたからだ。
俺達は此処で、「解呪には夢の中でメイアに接触しなければならない」とマヘリアさん(対策チームの人だ)から説明を受けた。
ウェンディ達の「悪あがき」の1つなのだろう、すんなりと解呪をさせてはくれないようだった。
俺達は再び夢の中へと向かう、メイアを悪い夢の呪いから解き放つために。
そこは不思議なところだった、様々な物語がミルフィーユのように折り重なった世界だ。
名前は「人造異界ドリームドロシーランド」なのだと、入り口(?)に居たメイド犬のミレッドが教えてくれた。
"ドロシー"
また、あの魔女が関わっている。
今回も、キャプテンドリルのときのように、人の望みを逆手に取って遊んでいるだけなのだろうか?
俺達は夢の中を駆けずり回って、メイアへの道を探した。
てんでバラバラに散りばめられた物語たち、あっちでは坊さんと豚や猿や河童を合流させ、こっちではきび団子を失くした男にお菓子の家の場所を教えてやった。
メイアへと至る道は幾つかあったようで、その1つは例のファンキーな僧侶(グラングル・G・具ローレンと名乗ったが正直ファンキーな僧侶だ)が守っていた。
そいつはこの夢の中へ「魂の一部」を残してあると言うから、今の俺達では分が悪いと考え他の道を探した。
そして強風を起こすことが出来るという扇を、先に夢の中へ来ていたグリンから受け取り道を開く。
そこはウェンディが守っていたが、グリンの援護により強行突破することが出来た。
遂に、扉の先―――
そこは真っ暗な空間であったが、この間体験した暗黒とは違った。
星空の上に立ったような空間だった。
そこには人の形をした何かが、幾つも幾つも居た。
しかしそこで、マヘリアさんに施して貰っていた「解呪」が発動し、それらの全てを消し去り、メイアの精神が俺たちの前に現れた。
そして空から(この空間に空は無いが、敢えて言うならだ)、ドロシーの声がした。
今回は、ドロシーは、誰かの望みを逆手に取って面白がっているのではなかった。
夢を繋ぎ、そこから悪意をばらまいて世界を渾沌とさせる。
思いのままに人を破滅させ、絶望を与え楽しもうとしていたのだ。
先ほど消し去った「人の形をした何か」はドロシーが召喚した夢魔の群れだったようだ。
こいつは、ドロシーは邪悪だ。
他人のことを何とも思っちゃいない、希望をちらつかせて良いように使うのだ。
こんな奴の楽しみの為に犠牲になったメイアのことを思うと、本当に居た堪れず、床を叩く気力も産まれないほどだった。
「解呪」が終わり、ドロシーの捨て台詞を聞くばかりの夢から醒める。
悪夢から目覚めて、メイアの死という現実と向き合う。
メイアは、そのまま眠るように息を引き取るかと思われていた少女は、目を開けて、ドロシーの誘いに乗ってしまったことを侘び、今回の件についての礼を、幽かに口にして。
俺達は泣くことも喜ぶことも出来ずに、ただ、気にするなと言い、メイアに「おやすみ」と別れを告げた。
冒険も世の中も、こんなことばかりなのだ。
既にどうしようもないことなんて、山のようにある。
それでも俺達は、冒険者は走る。
明日はもっと速く走る。
運命に追いつくその日まで。
メイアが最期にくれたような言葉が、俺達の背中を押し、心を燃やす。
こうして、2月の中旬頃に始まった異変は、ひっそりと幕を閉じた。
ドロシーに利用された少女の勇気によって、対策チームの、そして冒険者達の働きによって、惨事の結末には至らずに。
女性向け服屋の前でウインドウショッピングをしている人を見つけた。
その人は少年然としていたから、女の子にプレゼントでもするのかと思って声を掛けたのだが……
しっかり女の子だった。(しかし聞いてみると22歳だった、150cmくらいしかないけど。だってリフェリスと同じくらいの背格好で、パンツルックじゃあ少年に見えたって仕方がないじゃあないか?)
名前をアウロラという鳥の獣人で、旅人。
かなり久しぶりにスカートスタイルに挑戦しようと思ったのだとか。
(きっと気になる男が居るんだろう!)
女の子がお洒落をすると聞いたら黙っていられない俺は、アウロラへ入店を促し、勢い俺も一緒になって選んだりしていた。
お洒落上級者のジュリエッタさんが居ればと32回くらい思いながらも、初心者は初心者なりの楽しみ方をして、アウロラは2着のワンピースをお買い上げになった。
1つは黄色のシフォンなワンピース。もう1つはチェックの奴だ、試着した姿を見たけれど、街で歩いているのを見るのが楽しみだ。
俺は誰かに祈ってもらうのが随分好きだと言うと、明日の仕事が無事達成できるようにと割りとマジで祈ってくれた。
「俺は天使だから効くぜー」なんて言って、面白い人だ。
(背中の羽は一部を覗いて白いからまんざらでも無いけれど)
祈って貰えるというのは、とても良い。
勇気が持てる。
誰にも応援されないでいて戦うのは、とてもつらいことだから。
貧民区にある、メイア宅に来ていた。
前日までの夢の中や、当日のギルドで引っ掛けられたのはリタ婆さんだけだったが、途中で偶然リコスも加わって。
その家は、「小屋」それも「ほったて小屋」と呼ぶのが相応しいようなものだった。貧民区だし。
そんな小屋でも、修繕を繰り返し、この冬の寒さを確りと凌いできたのだ。
小屋の中を調べてみるが、特別不審なところは見つからなかった。
だが現にメイアと、先に訪れている筈のモーブが行方不明になっているのだ。
何か足取りが掴めるようなものがある筈だ……と、何か(嫌な)予感めいたものを感じていた。
部屋の様子をくまなく調べれば、この部屋を訪れたモーブが寝転がった(?)跡を発見することが出来た。
俺達は「メイアやモーブは、この家で眠りに落ちたことで、体ごと夢の世界に行ったのではないか?」と考え、その仮説を実行してみることに決めた。
眠りに落ちたのは俺だ、こういう役目は若いのがやると相場は決まっている。
リコスには魔法的なものを警戒してもらっていたのであって、女の子だからと差別したわけではないよ(震え声)
夢の中は、真っ暗だった。
真っ暗と言うよりは不気味な暗黒で、時折、淡い稲光とでも表現すれば良いのか……そういった仄かな光が空間を照らした。
そこにあったのは、幾人かの人間を丸めたかのような物体(その中にメイアの姿があったように見えた)と、ファンキーとしか言いようのない格好の僧侶だった。
正直なところ、他に言い表し用がないのでファンキーな僧侶と言っているが、間違いなく真っ当な僧侶ではない。
そいつの名前を聞く前に、俺はリタ婆さんに叩き起こされた。
現実世界では、敵が迫ってきていたからだ。
こちらは此方で、目がイっちゃってる修道女だった。(ウェンディ・ルナブルーと名乗った)
どうやら、俺が今やったように、此処で誰かが眠ったのに反応してそいつを始末に来る手筈になっていたようだ。
リタ婆さんが奇襲に対処してくれたお陰で、直ぐさま降参させることが出来たのだが……転移系の術によって逃げられてしまった。
転移に巻き込まれる形で無理に追いかけることも出来たが、単身乗り込んでも返り討ちに遭うだけだ、悔しいが……留まる他無かった。
リコスが魔力を追ったが、上手く撒かれてしまった。
奴らは一人では無く、計画的だ。
残された物の臭いを頼りに追ってみたものの、結局足取りは掴めず終いだった。
やられた、というのが、正直な感想だった。
ウェンディが「メイアは連れて行ってない」と言い残したので、俺達は今一度家の中を探した。
すると、家の修繕後にウェンディの術式が隠されていたように……床の修繕後の下にも、隠されていたものがあった。
メイアの入った棺桶だ。
メイアはその中で、殆ど生ける屍となっていた。
死んでは居ないが生きても居ない、奴らによって施された術の一部であるうちは「その一部として」生きているが、それから解き放たれれば間違いなく死んでしまうのだ。
間に合わなかった、というよりむしろ、俺達がメイアという少女に辿り着いた時点で既に手遅れだったのだ。
ウェンディは、俺達がメイアの家に辿り着いた時点で「私たちの負け」だと言った。
奴らの言う「勝ち負け」とは要は「作戦の成否」のことだろう。
メイアがこうして見付かった時点で、術は成り立たなくなり、奴らの目論見はご破算だからだ。
俺達に残された選択肢は3つ、それも奴らに関することではなく、メイアに関することだけだ。
「呪われたまま死なせる」か「呪いを解いて殺す」か「トドメを刺してやる」かだ。
どれを選ぶとしても、たとえ最善を尽くそうと間に合わなかったとしても、悔しさは込み上げてくるが。
迷いはなかった。
メイアは夢の中で「助けて」と叫んでいた、楽しく物語の夢を見続けている訳ではないのだ。
もしかすれば、この日俺が見た暗黒の夢を見続けているのかも知れない。
悪夢から覚ましてやる、それが俺たちに出来る最後のことだった。
俺は海辺が好きだ(確信)。
浜辺で獣人二人が話していた。
そのうち1人(犬獣人)と入れ違いで俺はやってきて、残っていたシルヴィさん(猫獣人)と幾らか話をした。
シルヴィ=クレティアンと名乗ったこの人は騎士だそうで、何やら自分探しの旅的なことをしている最中らしい。
騎士団長から「お前には足りないものがある」と言われてのことらしいが、漠然とした旅だ。
沢山の人と会い、様々なことを経験しようという目標で旅をしているようだったので、冒険者として依頼を請けてみることを薦めた。
差し当たって、薬剤師からの依頼を薦めておいたが、どうなっただろうか。
俺は足りないものを見つけられているだろうか、俺はこの街で多くの人と出会い、様々なことを経験していると、言っても良いだろう。
前に進めているだろうか。
あるときから、夢が繋がるようになった。
理由は分からなかったが、とにかく「夢が繋がった」としか言いようのない事態だった。
何人かが同じ夢を見ているのだ、その夢は何故か「物語」に限定されるが。
様々な夢を見た。
海の中、坂道、犬になったり、城の中だったり。
それぞれ別の物語ではあるが、関連性は「物語」であるということくらいだった。
実に不思議なことではあったが、特別何か実害がある訳ではなく人々の間で噂になるくらいに留まっていた。
ある日、その夢の中でエルフの少女に助けを求められるまでは。
死相の少女だった。
見るからに死をイメージさせるような、間近、それもすぐ手の届くような近くに死が忍び寄っている形相。
助けてと、それだけ。
夢の中で見た顔を手掛かりに人探しをするのは難しいことだったが、助けを求められたのは1人ではなかったようで、学院の者を中心に捜査チームが組まれていた。
メイアという、貧民区に住むエルフの少女。物語が好きだったらしく、図書館によく訪れていたという。
夢が繋がった現象は、この子からのSOSなのだろうか?
メイアの自宅を訪問していたモーブという剣士が戻らないという報告を受け、俺はメイアの自宅へと向かうことになった。
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