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2024/03/28

2/9 森の奥の泉にて

森の奥の泉からマリアさんの声が聞こえたので、俺は真っすぐ行って話しかけた。
三角獣のことについて、どうしても聞きたいことがあり、お願いをしなければならなかったからだ。


 マリアさんは先日の試合で顔に負った火傷をそのままにしていた。
それはとてもマリアさんらしくて、そういう意味で男前(女前?)で、実にチャーミングであった。
けれど本心を探るとかどうかに関わらず、満点の笑みが見られないというのはかなりの損失であることは間違いないと俺は思う。
自分を偽ることで駆け引きを楽しむかのようなことを言っていたけれど、俺にはそれは良く分からなかった。
俺が自分を偽るのはいつだって、自分を良く見せる為だけだ。
(そしてそれを剥がされるときはいつでも激痛を伴った。少しずつ本当に近くなっているだけで、それは変わらない。)

偽ってあまり良いことはないと言う俺に対してマリアさんは「自分の本質が『善』だ(或いは少なくともそう思えている)から」そう思えるのだと言うが。
もし其れが本当なら、自分の本質を『悪』だと感じる人は、自分を偽っている方が安心するのだろう。
思うまま悪で居られる者はともかく、自分の本質を悪だと感じた上で敢えて偽っているのはつらく寂しいことだ。
(この場合、悪が悪を成す為に自分を偽るのとはまた違う。マリアさんが試合中のドン引きするような恐ろしい感じを隠しているようなもののことだろう)


 で、俺は単刀直入に「三角獣を返して貰えるよう」お願いをした。
俺はマリアさんが彼に何をしてどうなったのか直感的に把握できるほど魔法に通じていなかったので、もし可能性があるならとダメ元で言いに来た訳だ。
此れまでは自責の念でこう口にする力も出なかったものの、ソレユ君が俺を勇気付けてくれたように思う。

下手に緊張してしまっていた俺と違って、マリアさんは試合内のことを外に持ち出さないサッパリした人だった。(とても良いところだ)
けれど、その口から出た言葉はやはり「食べて消化してしまったものを元に戻す事が出来るかどうかはわからない」というものだった。

マリアさんが食べる事が出来るのは物体そのものではなく、魔力的な、謂わば『魂』とでも言うべきものだ。
それを消化してしまって、また元の通りに吐き出すことが出来るとしたら、それはきっと神の領域だろうとマリアさんは言った。

 そこまで聞いたところで、マリアさんは俺に「何故そこまで執着するのなら、試合で選択を迫った時に三角獣の身の安全を第一としなかったのか」と聞いた。
今思えば、もしかすると答えように依ってマリアさんのこの件へのやる気が上下したのかも知れなかったが、この時の俺はそんなことを考えることさえなく自然に返答をしていた。

それは、試合中の自分の決断に自信を持てているからだったろう。
でなければきっと、もっと、後悔してしまっている筈だ。
俺は三角獣を失わず勝利を得る可能性があると考え、自分を信じてそれに賭けた。
結果としてそれは一部失敗してしまったけれど、そういったリスクを背負う覚悟をした上で決断出来ていた。

悲しいことは悲しい、だが後悔はしていない、悲しみの中ではあったけれど、俺は昔の自分との違いを感じていた。


 マリアさんは色々と手段を考えてくれた。冒険を共にしたよしみであろうか、力になってくれることに感謝こそすれど、試合でのことを恨む気持ちはない。
マリアさんは残酷なことを口にするけれど、これだけ誠実にして貰った後では冗談にさえ聞こえなかった。

 俺達が物を食べることと、マリアさんが魂(生命力とも言う)を『食べる』ことは大凡同じことだという。
そして、彼女にとってそれが同じであっても、他の人にとって違うことを分かっていてそう言うのだ。
恨んでも良いし、力づくで奪ってもいい、それが生きることなのだと。

そんなのは一周して優しさであるとさえ思うのに、マリアさんは自分を『悪』だと感じているのだろうか。


 俺は三角獣にしてしまったことの重みをこの身に感じてみたくて、俺の魂を一部食べてみて欲しいとも頼んだ。
それは何処をとっても単なる自己満足ではあったけれど、俺は自分自身が決断したことを正しく認識していたかった。
もし、それがとてつもない苦しみであったのなら。
優勝と引き換えにするべきでない程の、筆舌に尽くし難い感覚であったのなら、俺はやはり後悔しなければならないだろうから。

それを確かめたかった。
けれど、マリアさんはお腹も空いてないし俺はあまり旨そうじゃないから嫌だと言う。
(美味しそうだと思う要素は食べ物と同じで好みが大きいらしい……どうすれば美味しそうになるのかは今ひとつ分からなかったが何かショックだ。ルードローズさんが美味しそうなのだとすればちょっと難しい。)


 しかしながら、俺のやるべきことは決まった。
魂とでも言うべきものを失ってしまい、抜け殻となってしまった三角獣に、それをまた取り戻させてあげることだ。
体はきっと、アーシャが探し出してくれる。
マリアさんが言うには、魂は時間が経てば(もう一度産まれ直すような時間だ)勝手に溜まるのではないかと言うけれど、それはやはり生まれ変わりなのだろう。

だから俺は、彼の体を、彼の生まれ故郷へと連れて行くことに決めた。
其処でならもしかすると、例え生まれ変わるとしても、限りなく元の彼に近いものとして生まれ変わることが出来るかもしれないと思うからだ。

俺が彼にしてやれる事はそれだ、彼は俺のために生まれ故郷からペティットまで来てくれたのだ、今度は俺は其処へ向かう番だ。




お相手頂いたキャラクター… マリア

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2014/07/16 ユベルティ Comment(0)

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