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俺だって、治す魔法の才能があればと何度も願った。
けれど人の才は望むと望まざるとに関わらず振り分けられている。
もしかすればその内で、望みと才とが合致した者こそが一流と呼ばれるものになることができるのかも知れない。
俺の「望んだ」力は、Marchenによって引き剥がされた。
俺に「与えられた」力は、望みとまるきり正反対では無いにしても、こんなにもねじ曲がっている。
この大会に至るまで、俺がこの力を手にしなかったのは、見て見ぬふりをしてきたからだろう。
自らを閉ざして、演じて、認めてこなかった。
けれど今は此れこそが俺の"自然"なのだと分かる。
もし俺が治す力を得ようとしても、今の力の半分の成果も挙げられないだろう。
それは俺にとって"不自然"なことだからだ。
どれだけ捻れて居ても、此れが俺の持つ一番強い力なんだ。
水鳥のように、優勝を目指す。
ラゼットとのコンビネーションは楽に決まる、これが純粋な2対2であれば楽な戦いだったのではないかと思うくらいに。
けれどそう上手く行かないのが三つ巴と言うもので。
俺の秘密兵器やラゼットの瞬発力は決定打にならなければ後が苦しい、そして邪魔が入って決定打になりづらいのが三つ巴という奴だ。
正直なところ、いかに相打ち上等なMarchenに狙われないかという試合でもあり、応じてしまうタチのラゼットに狙われるなというのも中々難しい話だった。(目立つ鎧も付けていたのもあり)
それに俺にも、上記のような理想通りの戦いに徹することが出来ぬ理由があった。
サリアさんのことだ。
コールさんも、あの一戦だけではサリアさんのことをハッキリとは掴みきれなかったのだろう。
俺と同じ疑問を抱いているようだった。
『悪』に執着しているようだったと言った。『悪』を討たねばならぬ理由があったのでは無いかと。
けれど其れなら、ルインを差し置いてコールさんを討たんとした理由は何だ?
それはともすると、コールさんを試していたのかも知れない。コールさんを見定める為に敢えてそういう態度を取ることは考えられた。
そして何故、『悪』に討たれて満足することが出来る?
それはもしかすると、ClasHの2人が己の『正義』を上回ることを確認したからではないだろうかと俺は思った。
正義と悪との終わりのない戦いに於いて、己が討たれるに値すると感じたのかも知れないと。
自分が悪を討つように、いつかは討たれる定めであり、今がその時と感じたのだと。
対峙していたClasHの2人にとっても不可解であったサリアさんの様子に俺が説明を付けるとするならだ。
そして、死人に口無しと言うように、その真意を確かめることは既に出来ない。
だから俺は、この仮説に基づいて"弔い合戦"を行う。
もし、サリアさんが『悪』に討たれることに納得していたとしても、それでも正義の人が、悪が討たれぬことを望むはずもない。
正義がやはりまた悪を上回り得るとこの場で示す事こそが、そしてそれを大会が始まる前にサリアさんと交わしたルールの中で行うことが、俺の弔いだった。
(と、ClasHの2人を焚きつけることもまた目的であった。恐らくサリアさんがそうしていたように。)
コールさんは善悪で割り切れぬ人の想い、人の願いの為に戦う。それで良い、コールさんはコールさんの思いで、ルインはルインの思いで、俺は俺の思いで戦う。
其れこそがサリアさんの意志であったのではないかと思う、サリアさんが納得したのは『悪』に討たれることを許容したからではない。
きっと自分の生き方を曲げてしまったことへの責任を取ったのではないだろうか。
ClasHに対し、信念を違えるなと示していたのかも知れない。
※ただやっぱりルインは悪いやつだと思うからとっ捕まえた方が良いというのはラゼルティの総意だ。(主に良いところで俺にボウガンを発射しそれをラゼットが邪魔にならないように気を利かせて刺さってしまったから)
コールさんとの戦いは、最後まで相性が物を言った。
正面からのど付き合いも、俺が機先を制したことが決定的な要員だ。(コールさんは男らしく俺の拳と魔法を"受けて"しまった。)
俺はクロスカウンターなんてまっぴら御免の男らしくないヤツであり、コールさんを一方的にふっ飛ばしてやるつもりで行っていたのだから。
スタイルがコールさんにとって悪い意味で噛み合ってしまった。
"受けて流し"カウンターを決めるタイプのコールさんと、衝撃を"流させるも流させないも自在"という力を持つ俺が、真っ向勝負、お互いの"得意"をぶつけあってしまったから。
けれどコールさんは心底恐ろしい男だ。
ど付き合いを終えても闘志を激しく燃やし、ラゼットの追撃のクビカリウサギを掠らせ更に俺の追撃をすんでのところで交わした。
此れには舌を巻く、其処らの冒険者風情の動きでは到底無い、「何でも屋」(戦いが専門ではないという意味で)と侮って居たが、恐ろしく腕が立つと此処だけでもハッキリ分かるほどだ。
もし、この時点でコールさんと同じだけルインに闘志が残っていれば恐らく勝ち得なかっただろう。
何しろコールさんの"底"はまだ先があったからだ。
『満身創痍』コールさんの口にしていた言葉の意味を、俺達はその瞬間に理解した。
ラゼットのラスティエッジによって深い傷を負ったコールさんの身体能力が、飛躍的に向上したからだ。
試合も終盤というところで、瀕死の相手が急に強くなるのだから俺達にとって此れほど嫌なことは無かった。
初見、コールさんの仕掛けた爆発という邪魔が無ければ事態を把握する前に叩き斬られていたのかも知れない。
どうにかこうにか仕切り直しに漕ぎ着ける、長く続くものではないとコールさんは口にするが、凌いで勝つのは冗談じゃない。
体はどうしようもなく辛かったが、晴れやかな気持ちではあった。
ハッキリ言えば、胸踊り、興奮していただろう。
ラゼットとコールさんと同じステージで戦いたいという気持ちが俺を飛躍させていた。
そう感じていただけで、やはり傍から見れば俺の動きは3人の中で確実に最もトロかったのだろうけれど……俺の"認識"は追いつこうとしていた。
自分の体の動きのスピードを超えて、相手の動きを捉え、その先をイメージしようと。
それでも絶対的な速度の差は埋められずにコールさんの一撃をこの身に受けてしまう。
2人係でも、遂に捕まえることは出来なかった。
決まり手が「時間切れ」であったのは、涙が滲む悔しさがあった。(本当に負けてたら別の要素もあって泣けるが)
こんなものを魅せつけられてしまって、悔しくない訳がない。
敵わなかったと示されたようなものだ、喩え其れが一時的なものだから何だというのだろう、最高到達点が自分のずっと向こうにあると示されたことは、俺のクソみたいな自尊心をズタズタにするのに十分なものがあった。
(所詮何でも屋と侮っていただけに)
俺の認識のイメージが、別次元のスピードの端を捉え魔法を間に合わせることが出来た。
「顔を狙われなかったから」というのは甘えだ。
だが、「殺す気で行っていたら勝てていた」という考えのリスクは、俺も負ってきたことではあった。
巡ってきたのかも知れないとも思う、だから今はそれに甘え、カードを受け取った。
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