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森を歩いていると、ネージュの姿を見つけた。
ネージュは遠く旅に出ていて、会うのは1年ぶりのことだ。
このときネージュは弓の練習をしていて、それも、だいぶ集中しているようだったから、俺はそれを少しの間見ていた。
1射目を少し外してしまった後、2射目に中々向かえないでいる姿を見ていると、こちらまで緊張をして
つい「落ち着いて」と言葉が漏れてしまった。
小さな声だったのだが、ネージュは集中していて感覚が研ぎ澄まされていたのだろう、「どうすれば落ち着けるのか」と、此方を振り向かないままで。
この集中を乱してしまうのが怖かったのだが、俺は口を開くことが出来た。
そして、ネージュが静かに頷き、放った矢が的を射て世界に音が戻るまでの間
俺は自分がこの場に居ることすら不思議な気持ちだった。
ときどきこのように、はっとさせられる瞬間がある。
普段からは想像も出来ないような、強く美しい一面。
これは旅をしてきたからというだけのものでは無いだろう。
広場だったら、らんらららんらら小躍りしてぐるぐる回っていたかも知れないが、こういった再会だったため、お互い緊張から解き放たれて「あ~良かった」と安堵したタイミングでの挨拶となった。
久しぶりに会うネージュは、(先程のこともあり)一回りたくましくなったように思えた。
以前までの、広い世界を夢見て旅立ったばかりのお嬢さんというイメージは徐々に覆されつつある。
しかし、その現実的でないイメージは、実際、俺にとっては好ましいものだった。
その"甘さ"は、俺が好きなものであり、実に苦しめられているものでもあるからだ。
だから、その甘さを見ていたいとも思っていたのだ、それを残したまま変わっていくのか、切り捨てるのか、興味のあることだ。
そしてその変化の一端か、弓の練習を「もっと頑張る」と言う。
理由に特別なものは無いというが、旅の中で様々なことをもっと頑張らなければ、と思ったそうだ。
きっとそれは現実的なことであり、大人になろうとしているのかも知れない。
変わっていないところも勿論あった。
素直に人を尊敬することが出来るというか、世辞でなく、狡猾なところも感じられないもの。
他人のことを良いように捉えられる、とでも表現するのが良いのか、上手い言葉が見つからないが。
それを言葉にして相手に伝える、日常的に行うということは、俺は中々大変なことのように思える。
何しろ相手を褒めたところで、俺のようなひねくれ者からは「そんな事はない」と否定されることも多いからだ。
(ここで謙遜をするのは桜花的な精神とよく言われるが、港町であるペティットではまま見られる)
最初から口にしなければ、自分が傷つくこともない。
返報性の原理から言って、相手を良く言う方が自分の得になるし、良く言われたときも否定するよりは感謝した方が得になる。
そうだと分かっていても、中々出来ることではない。
悪い点を見て生きるよりも、良い所を見て生きる方が善いと思っている人間にしか出来ないことなのかも知れない。
他、旅の間の話……は、あまり時間がなく出来なかったが、旅の間に交換した物の話をした。
ネージュから貰った「魔法の雫」を俺が勿体ぶっていて中々飲めないでいる話だとか、俺がミカちゃんから貰って贈った簪のことだとか。
簪について、俺が「近くに居ない相手との繋がり」として贈ったものだから
「旅に出て行かなかったら他の人に贈ったか」とネージュは言った。
(ミカちゃんのセンスが余程良かったのだろう、貰えなかったとしたら残念だというくらい良いものだとは思わなかった。さすが女心が分かっているということなのだろうか)
答えは恐らくイエスだったろう。
勿論、同じ街にいる相手なら手紙や物を送らずとも会いに行けば良いのだし、それに
女の子に対して身に付ける物を贈るのはレベルが高いとは良く聞いたものだ
街から離れていたからこそ、顔もリアクションも見えないし、えーい、贈ってしまえ!と思うことが出来たのも大きな要因だったからだ。
ただいまが聞けて良かったし、おかえりと言えて良かった。
だが、このことで俺は前にも増してネージュの旅の理由が気にかかるようになった。
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