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私立図書館で、本を参考に紐の編み方を勉強していた。
シアルフィーアさんがこの街を発つという。
シアルフィーアさんは以前、僕が会話の中で「冒険にも堪える時計があれば」と言ったのを覚えていてくれて、丈夫な懐中時計を作ってくださっていた。
けれど、本当に残念なことだったが、そのときは、僕はヴェロナージから戻ったところで借金真っ最中、懐中時計という高価なものを買う余裕はこれっぽっちも無かったのだ。
「買うアテが出来たら」と言って濁したまま時間が流れ、シアルフィーアがペティットを発つ日も近づいてきたとき、再び連絡を下さったのだ。
それは殆どその懐中時計を譲ってくれるという内容に等しく、「そのために作ったのだから」という職人の意地のようなものが感じられたし、そう言われて無碍にすることも出来ない。
(勿論タダ同然で譲り受けることも承服しかねる!)
ので、図書館に来ていた。
俺が何とか手に入れることが出来た「良い物」を贈ることしか、考えつかなかったので
懐中時計の値段には、勿論及ばないものだが、贈りものを自ら採りに行き、加工して貰い、それを編むことで"対価"と旅立ちへの"餞別"にし、俺が納得することにした。
それは樹で出来た紐だ。
蔦のようにしなやかで柔らかく丈夫、肌触り良く加工して貰い、それを編んだものは懐中時計のチェーンに丁度良いのではないかと思った。
魔法的なものにも銀などとは別の方向で魔法的な適性も良いし。
が……俺はこの”編む”というのが苦手だ。
三つ編みがギリギリ出来るくらいで、靴紐は結べるし(他人のは結べない、左右が逆になるから)、捕縛した相手をふん縛るのも出来る。
だが、こういうのはちょっと……(覚えるのに時間が掛かる)
図書館で教本を探し、それを元に練習していたのだが、中々上手くいかない。
悪戦苦闘しているところを、司書のスーザンさんに見つかってしまった。
司書という職業は、ニンジャの次に気配を消すのが上手なのではないかと思う。
スーザンさんは、無理だと思ったら専門家(手芸屋さん)に頼んでみてはとアドバイスをしてくれた
半分は専門家に、半分は自分でトライする二段構え。
素材を手に入れるのが遅れ、もう半日も時間のない俺には丁度良い方法論だった。
しかし、スーザンさん自身は紐を編んだことは無いようで
俺の「女の子は大抵編み物が出来る」といった考えは神話であることが判明した。
そして階段坂。
俺はどこか喫茶店でというような事が苦手だし、かと言って酒場というのはどうかと思ってのこと
だったが、雨……
とことん何だかかんだか。
シアルフィーアさんはペティットを離れ、故郷のカビノチェからも離れ、遠くへ旅に出る。
ペティットへ来てからも故郷の時計を広め、祭りには戻り……その姿に時計と故郷、カビノチェへの愛を感じたものだ。
シアルフィーアさんが懐中時計の対価として提案してくれたものは、俺が冒険者として、旅人として「カビノチェの話をする」ことだったのも、時計を使って欲しいという気持ちと故郷への気持ちが表れたもののように思える。
だが、俺にはそのことが不思議だった。
何故故郷に対してそのように思えるのだろう、故郷を懐かしいと思う気持ちはともかく
「故郷のために」というのは、俺には少し理解が難しいことだ。
故郷がシアルフィーアさんに何をしてくれるのだろうか。
何をしてくれたのだろうか。
どういった風習があり、どのような人達が居て、どうして育ったのか……そういったことを知ることで、故郷を思う気持ちというのを頭で理解したいと思った。
全てを聞いている時間は、これから旅立つというシアルフィーアさんに無かったことがとても残念だけれど(そもその人が好きな物事の話を聞くのは楽しいことだし)、短いやり取りの中でも、シアルフィーアさんが純粋でひたむきな人なのではないかと言うことは何となく分かることだった。
これからの旅が良いものになる事を祈ると同時、再びカビノチェに戻ったシアルフィーアさんの時計がどのようなものになるか、非常に楽しみでもあった。
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