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2024/04/19

2/17 VS龍翔氷ノ羽音(仮)3

魔法のスクロール「マーシュ・スワンプ・アンド・マイアー」
岩を泥や砂に変えてしまう魔法が封じられている。
変化させられる量は体積にして、たったの1立方メートル程度ではあったけれど。
俺の狙いは、その泥や砂そのものではなかった。

効果範囲を細く引き伸ばして糸状にし、岩を賽の目…丁度ルービックキューブのようだ…に切り離すためにそれを使った。
俺の「バウンス・ノーバウンス」を掛けるには対象を1個のモノとして認識しなければいけない。
天道へと続く限りなく広い地面は、俺の立っているその一部は、1辺1mのサイコロ状へと切り離され、27個のモノになった。

シューティングスターダストキュービック
それらはフィールド内を跳ねまわって、パルティータさんの発生させた氷塊と打ち合い天道の発生させた氷樹を打ち砕き、ロゼッタさんの足場になる。
そこにCrasH戦で使ったような鉄球を加え、更には無造作に跳ねまわるそれらをアーシャの導きによって誘導する。

切り拓く力…今思えば、27個のキューブと10を数える鉄球、そして分身させたアーシャ……
普段の魔術管理キャパシティをずっと超えているものだけれど、どうしてこのときは、いつもやっているかのように出来たのだろう。
その感覚は、亜人狩りを止めるため、ライダー達と決戦を行ったときのものに似ていた。


 このキューブ達は天道さんやパルティータさんを打ち倒すことは無かった。
特に天道さんは相手の力を使うことも上手い人だ、俺のキューブのうち約半分は天道さんの念動力に支配されて俺のキューブを撃ち落としにかかる。
賑やかだったフィールドに、再び氷の静寂が訪れようと……
けれど、確かに道を作ってくれた。そしてロゼッタさんが、天道の魔法、その輪廻を一瞬崩した。
俺が足を前に進めるのに、これ以上の理由は要らない。
観客の声も聞こえた気がした。
苦しいだろう、厳しいだろうと……でも、頑張れと。

回転するキューブに、旗で逆の回転をかけて威力を増して打ち込んだ。
バウンス・ノーバウンスの副産物とでも言うべき"摩擦"にこのとき、初めて、自然に気が付いた。
天道さんの守りを突破するために、もっともっと威力が欲しい。
その為にはどうするべきか、俺の無意識が加速していた。

パルティータさんの使い魔が、天道さんの不発に終わった術のエネルギーを用いて、俺をキューブの盾から追い出す。
余すこと無く使い倒す、龍翔氷ノ羽音らしい戦いだ。

回転キューブは、天道さんが支配したキューブが3つ掛かりで止める。
ねじ込む、もっと、もっと!!

毒の短剣で天道さんの車椅子を狙う。
この短剣に塗られた毒は、魔力に染み込む。
天道さんがもし凍土化を解いてその魔力を自分の体に還元したら……そのときに彼女の体を蝕むように。そういうものだ。

だからもっと押し込んで、追い詰めて、「よく此処まで来たな、だが私の勝ちだ、本気を見せてやろう」そう言わせなければならない。(それは皮肉なことに、キューブを用いたことでその必要性を天道さんに失わせてしまっていたのだが)


 そのとき、目の前でキューブ達が弾け、短剣が打ち飛ばされた。
天道さんが僅かに調整していた、まだ生きていた俺のキューブが飛んできたのだった。
目の前が開ける、氷の破片を撒き散らして。

前が見えた、天道の姿が見えた。
ああ、あとたったこれだけの距離じゃないか。

俺は届くかも知れない。


しかし俺はそれを見ただけだった、射線が開けることが分かっていた天道さんは、俺に氷の槍を放っていた。
それは冷たく鋭く、一瞬持ってしまった希望を刺し貫くようなものだった。

此処で此れを受けてしまっても、防いでしまっても、ひとつ遅れてしまう。
そうしたらもう二度と届かない、追い詰められない。
終わってしまう。
そう直感したときには、鞘に手が掛かっていた。

"ラスティエッジ"
ラゼットから試合前に借り受けた刃。
この剣は恐ろしいほどの鋭さを持つが、それを維持できるのはほんの一撃の間だけ。
猟奇殺人鬼が用いていた身の毛もよだつような切れ味。
それが氷の槍を切り裂いた。
殆ど衝撃は感じない、空気を斬ったかのようだった。
氷の槍は、俺が前に進むスピードをほんの僅かも落とすこと無く2つに別れて。

加速していく、高まっていく。
コールさんと戦ったときの感覚がまた押し寄せていた。
次にどうしたら良いのか、行動する前から分かっているかのように体が動いた。
俺にあるのは紅い身体強化でも赤い角の力でも血い魔法陣のスピードでもなく、この速さなんだ。


ACEを切る。
グリンさんのAs(AccelとAntiを用いた身魔一体の速さ)を参考にした、俺のACE。
俺にだって出来る。絶対に負けない。諦めない!!
後でバウンスドパイルと名付けるこの技は、その気持を乗せて天道の翼二枚を穿った。

けれど終わりじゃない、俺は走りだしていた、走りだしていることにも気付かないまま。
天道さんの翼を剣で薙ぎ、拳で打って魔法を伝えて機能不全に陥らせた。

良いことだとは思わないが、確かに楽しかった。
ロゼッタさんの命も危ないようなこの状況で、優勝しなければネージュの身もどうなるか分からないようなこの舞台で。
強者を演じ自分を追い詰めてくれる者を待つ天道を追い詰めようとすることは。

もっと前に、もっと前に!この拳が天道禊に届くまで!!

けれど俺は――



夢を見ていた。


優勝を果たした夢を。
もっと前に、もっと前にと、戦いの先を読もうと加速し続けた頭が見せた夢なのだろう。
そこで俺は高らかに宣言していたんだ。

キャプテンロック、次はお前だと。
お前が成し得ず諦めて逃げ出した大会に優勝し、真正面からお前の卑劣な遊びを超えたのだと。

それが海賊にとって何ら不名誉と思わずとも、俺はそれで良かったんだろう。

勝ち誇っている姿を見ていたけれど、それはただのビジョンで、何かを得た感覚は何処にもなかった。
勝ち誇ることは悪徳だ。
けど、優勝の瞬間だけはそれが許されるような気がした。
俺は、あとどれくらい頑張れば良い…?

それだけをぼんやりと思ったとき、俺の目は再び開いた。


 天道の落胆した眼が見えた。
"違った"かと言われているようだった。
追い詰め、追い詰めさせんとする部分では共有できるところがあったとしても
俺にとってそれは、優勝への道筋でしか無かった。

天道を視て居なかった。
勿論、俺は優勝するために天道禊という人物を見て、戦い方を見て準備をし戦った。
しかし闘いに対する欲とでも言うべきものなのか、鬩ぎ合いの中で貪欲になれなかった理由はそこにあるのかも知れない。
俺の戦闘者でない本性が、この試合で打ち砕かれるのは、当然と言えば当然のことなのかも知れない。


俺はそれを承知の上で戦ってきたつもりだった。
その"我儘な優勝"を命題としてきた。
そして届かなかった。

こんなときでも、俺は取り繕っていた。
大声を出して誤魔化していた。
本性を剥き出しにしてでも優勝しようと決めたはずなのに、負けた途端、また見栄を張っていた。

どうしてこうなってしまうのだろう。

どうしてこうなってしまうのだろう。

優勝の先にその答えを求めた大会に負け、俺は未だ、変わりきれないまま。

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2014/11/14 ユベルティ Comment(0)

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