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決戦前夜というやつで。
最終調整を終えて帰る途中、階段坂にラゼットの姿を見つけたので絡みに行った。
時間はそうあるものでも無かったので通り過ぎても勿論良かったのだが、知り合いの顔を見て思わず寄って行ってしまったのはやはり、不安だったからだろう。
温泉に関する無駄話をだらだらとしてしまったのもまた、そういうことで。
(ラゼットは耳が良すぎて周囲の生活音が気になるらしい。犬は嗅覚をコントロール出来るというが……聴覚はそうもいかないか。)
助太刀の礼をしようと思ったが、どうもラゼットはロゼッタさんに任されたという以外に、カトゥのことを気にしていたようだ。
俺としちゃあ元あったところに戻したというだけのことだが、ラゼットにとっては中々の意味があることであったようだ。
一度"捨てて"しまったからというが。
ラゼットが嘘をつき、笑顔でカトゥに会いに行ったのなら、それは十分な報いとなった筈だから。
ラゼットが俺の主義……つまりは、【壊さず・壊させず】についてリスクとリターンが釣り合っていないことを指摘するのに、俺は淡々と答えた。
実際に、客観的に見て、ラゼットの言うとおりだろう。
向こうは殺す気で来て、俺達はそうではない。
相手より数段上の実力を持っている訳ではないのに、何故態々、自らハンデを背負う必要があるのか。
俺は勝ちたい。
人はそれぞれ、どのような形でか勝ちたがるものだろう。
それは物に限らず、何かを手に入れたいという根源的な欲求。
他者よりも優位に立ちたいという気持ち。
俺はこの、どこから来ているのか分からない汚いものが嫌いだった。
それが自分の中から出てこないように、一切言葉を発さないようにした時期があった。
どこまでも"無欲な良い人"を演じていれば、いつかそうなれると思い込んでいた時期もあった。
けれどそれでは何も得られず、変わらず、その間にこれは俺の中で力を増していっていたようだ。
でも俺は信じていた。
自分が"善い人間"なのだと。
……ヴェロナージで自分の欲求と向き合わされるまでは。
それから暫くはどうしていいか分からなかったが、あの日、俺も変わりたいと願った。
今まで押さえつけていた欲望を成就させれば、変われるのではないかと思った。
長く俺の中で飼われていた欲望は、簡単に得られる勝利ではまるで満足しない。
俺の欲望と理想を足しあわせた勝利が必要だった。
それが【壊さず・壊させず】での優勝……俺の「欲しいもの」。
これを成し遂げられれば道が拓けるような気がした、欲望の先へと向かうことが出来るような気がした、キャプテンロックも優勝を諦めたこの大会で。(彼にとってはどうでも良いことだろうが)
優勝が欲しいと口にして納得する者はそう居なかったが、それこそが俺にはどんな賞品よりも大切なものだ。
ラゼットは俺が其れを成して、どうなるにせよ、その果ての納得を掴むことを
或いは、現実に打ちのめされ妥協(相手を殺して勝利ないし、欲望の達成を諦め死ぬ前に降参する)することを。
ラゼットも変わりたがっていた。
盗賊から冒険者となり、冒険者となって自らの由縁を探し求めていた。
そしてペティットでその由縁を見つけ、冒険者としての意味も無くなってしまったという。
そこで変われると思っていた筈が変われずに、今は次の道を探していた。
傭兵にでもなればと言ったが、力を振るうことが目的ではないらしい。
"目的"を探している……目的の為には真っ直ぐな奴だが、それが無いときはどこか空虚だ。
早めに見つかれば良いのになとは思うが、今は明日の試合のことを考えよう。
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