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魔法の雫。
それはネージュから旅の土産にと貰ったものだった。
1日のうちにそれを3回に分けて飲めば魔法的な力が向上すると言われているもの。
俺はそれを、貰ってから長い間、飲まないままずっと閉まっておいていた。
ネージュには開封しない方が見た目として綺麗だから勿体無いだとか、飲み忘れてしまったら無駄になってしまうから緊張してしまって飲めていないだとか……適当な言い訳をしていた。
けれどこのShowdown、予選が激しくなるにつれ、俺は藁にもすがる思いだった。
本当は飲みたくなかった。
それは見た目の問題や緊張からではない、もし飲んでみて変わらなかったら?
自分に今以上の力が無いと、自分が特別な存在でないと証明されてしまうことが怖かった。
この「バウンスノーバウンス」だって、まだほんの僅かなことしか出来ないのに、どうして優勝に至る力になると信じられる?
他のことを鍛えた方が良いのではないか?
サリアさんだって死んでしまったのに。
「誰かのため」という言い訳も、つい昨日、拒絶してきたばかりだった。
このアイテムに"賭けた"訳ではない、出来ることを全てやっておきたかった。
負けた後で「何故飲まなかったのか」と後悔したくなかった。
しかし、魔法の雫を口にしても、やはり何か強力な力が引き起こされることもなく、多くの人がそうであるように、魔法的な力が実感できる程もないくらいに、僅かに向上したようだった。
負けてしまったら?という考えを押し殺して、俺はただ、思考を止めているのと同じくらいに今できる事をと、棍を手にし。
そして……
泉に、一羽の水鳥が居た。
その姿は何の変哲も無く、ごく自然に魚を獲り、そして飛び立っていった。
美しく、合理的で、目的へ向かう無駄の無い力だった。
俺の力とはまた別のものだ。
優勝という目的を為そうとするならば、バウンス・ノーバウンスのような壊さない魔法ではなく、壊してしまえるような魔法を身につけ、用いたほうがずっと速い。
この日の光景は俺にそれをハッキリと自覚させたが、それらは相容れないものではない。
不自然な目的の為に、自然な強さを用いることもきっと出来る筈だ。
そうでなければ、力を持つことそのものが悪だ。
そう感じたときか、水鳥から落ちた何かをアーシャが拾って持って来てくれた。
アタラクシア。ここに居るはずの無い青い鳥。
俺がヴェロナージで一時的に全ての魔力を失ったとき、繋がりは切れてしまったはずだ。
だから召喚したのではなく、アーシャ自身が、俺のところまで飛んできたということになる。
水鳥から得た鳥と、己の思い描くものを為そうとするビジョンが、アーシャを此処へと呼び寄せたのかもしれなかった。
勝てるかどうかという不安はある。
優勝に向けた苛立ちや歯痒さ、悔しさはある。
けれどきっと、優勝を目指すことは無駄ではないとこの時、信じることができた。
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