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旅立ちを前にして、俺は海浜公園に来ていた。
ペティットに来てからの一番の思い出の場所と言っていいのかも知れない。
この船の上で過ごした時間そのものはそう長くは無かったけれど、とても印象深い場所だ。
けれどあの日以来、今日までこの船の上にまで登ったことは無かった。
何故かと言えば、複雑な思いがあるものだけど……なんだか過去の栄光に縋っているような感じがするからだ。
俺は何処か、いつもゼロで居たいという気持ちがあるのだろう。
それでもこの日は船の上に登った。
暫くこの景色も見られないのかと思うと、急にその気になった。
この船の上で杯を交わした者にも、当分会えないのかと思うと。
ろくに会いに行ったり……どころか手紙も寄越さない性分のくせに、惜しくなったのだ。
そして、あの日の自分と今の自分を見比べて。
旅から帰って来た自分がどうなっているかを想像する。
変わっているだろうか、変わっているだろう。
その時の自分は本当のことに近付けているだろうか、幸せを導けているだろうか。
不安はあるけれど、この思い出が背中を押してくれるような気がした。
『龍翔氷ノ羽音(仮)』対『Heart Beats』
Showdownの決勝戦を俺は実況として見ていた。
実況としてその場に居たのだから、敗者としてその試合を見ていた訳ではないけれど
それを差し置いても、俺はすっかり一人の観客として『Heart Beats』を応援してしまっていた。
決着のその時まで、ただただ興奮して試合の内容を口にしながら食い入るようにその集大成を見詰めていた。
全てを出し切って尚届かなかった『Heart Beats』の美しい敗北と、全てに勝利して尚どこか虚しい『龍翔氷ノ羽音(仮)』と。
俺はどちらになりたいのだろう。
どうなりたいのだろう。
俺が優勝に賭ける思いって、これで良いのかな。
俺はやり切れない気持ちのまま、闘技場に向かった。
少しぼうっとしていたけれど、心をアリエスに置いて来た訳では無い
置いて行く訳にも、振り返る訳にも行かなかった。
振り返らずに此処に来なければいけなかった。
その理由がある、この場所に。
あの子をただ、可哀想だから好きだと言うように扱っていた場所へ。
俺は途中までであっても、この大会、Showdownの賞品として「倫の火」を手に入れて
それを渡して街を去ろうと思っていた。
それが自分のあるべき姿だと思っていたから。
可哀想な子に手を差し伸べて、礼も受けずに去る。
そんな人間のやるべきことだと思っていたから。
理想だった。
変わりたいと思っても変われずに居て、他の誰もが変わらずに在れば良いとさえ思ったから。
あの子の気持ちも考えずに、そんな幻を守る為に使おうとしていた。
だから、その気持ちを確かめに来てしまった。
今それが、どんな風に見えるのか。
ラゼットが居た。
彼も思うところがあってのことだろう。
何しろ、この大会を通じてずっと、もがき続けていたのだから。
同じように、確かめに来てしまっていた。ラゼットの大会も終わっていたから。
しかし、彼は……ラゼットという獣人の目的探しで戦っていた男は……何かを見付けたのだと口にした。
また見つけられて、運が良かったなと言った声は棘があったかも知れない。
3位決定戦にかこつけて試合を挑んだのは、次は参加しないと言うラゼットに勝って文句なしの優勝者でありたいという気持ちがあった。
大会で成し得なかったことの延長戦がしたいという惨めな縋り付きがあった。
そして俺が見つけられなくて、ラゼットが見つけられたものを知りたかったのだろう。
ひょっとしたら、準決勝よりも熱くなってしまっていたかも知れない。
大会を経て、もし自分が、いや、自分の戦いさえも変わっていなかったら。
これが俺の答えなんだなんて虚勢を張ることでしか、自分が成長しているのだと思えない。
どこまで弱いんだ。
だからさあ、ラゼット。
次は出場しないなんてつれないこと言うなよ。
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お相手頂いたキャラクター ラゼット グリン コール
こういうとき、痺れを切らすのは俺の方だ。
あくまで最初は普段通りに……というのを続けられない。
リフェリスが去年の冬に体調を崩して入院してから、およそ初めてと言ってもいい、ゆっくり話す機会だったからだ。
相手より先に痺れを切らした上に、半端に土足で踏み込み……そのくせ、奥へと踏み入らずに引き下がる。
俺は酷いことをしているんだ、そう思う。
けれどリフェリスは怒らないし、そんな不器用な足取りでしか、俺は他人に近付いていけない。
ただ少し勇気付けてやるということにさえ、思うようにいかない。
(そんな中、フリーレンが間に入ってくれたのは、とても俺の緊張をほぐした)
それで、なんだ……俺は、出来る限り正直に応えた。
隠し立てすることなく。むしろ、隠し立てすることが無いのはリフェリスだからだとも言える。
良い(隠し事をしなくていい程度に安心している)意味でも、悪い?(隠すべき感情が無いという)意味でも。
好意を持っていると言われて、どうして嫌に思うだろうか。
月並みな。それこそ、嫌な相手とは連れ立ってリラクゼーションに来ないとか、リフェリスは控えめに言って可愛いとか、何か束縛してくる訳でもないからデメリットが無いとか。
そんな論理的な理由では、悪い気がする筈もない。
しかし、だからと言って、悪い気がしないからという理由で応えることはしたくない。
俺自身、納得が出来ない。
本当のことじゃない、と。
真剣な眼差しを向けてくれるほど…。
それで……つまり……。
嫌いじゃないが、応えられない。虫の良い話かも知れないが、友達として大切に思っているから、気を落とさずに元気で長生きしてね。(意訳)
そう言いたかったわけだ。
しかしそれで終わらないのがリフェリスの凄いところで。(これに関しては本当に感服している。このことに関しては一目置いていると言って間違いない)
旅…これも理由の一つだった。一年も離れるつもりでいるのに応えられようもない。俺の中で天秤にかけ、旅を選んでいたのだから…に、同行してくれると言うから驚いた。
恐れ入る。
そのガッツも、もしかすると彼女は振り絞って出しているものなのかも知れない。
それに応えてやらないというのは何とも残酷な気がしてならなかったが。
情けや憐みなどで返すことなど、到底許せることではない。
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