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この日は屋台の店員をやっていた。
以前、俺と共に暗黒相撲界と戦ったモラドさんから、屋台の人手が足りないということでヘルプを請け負ったのだった。
その屋台にアキトさんがやってきた。
料理を提供しがてら話をしてみれば、俺と同じく冒険者だという。
ならばと、依頼を幾つかアキトさんに提示してみた。
フライルー地方へと旅立つ予定の俺にしてみれば、丁度、溜まっている依頼を回せそうな相手に出会えたところだったのだ。
その中でも下水道の調査に…というか、その報酬に興味を得たようで。
下水道が詰まっている原因を調べてくる、という依頼だが、その原因が魔物であったとしても「討伐」までは求められていないところが味噌だ。
しかしどうやら、家賃の支払いが迫っているようで中々切羽詰まっている風だ。(ので、ちょっと料理をサービスしてしまった。助っ人なのに。)
そういう焦りがあるとき、依頼の中で良くないコトが起こる可能性は上がる。
アキトさんは好青年ではあるが、あまり荒事が得意そうでない様子を見て、俺は別の依頼を勧めた。
せめて、もう少し人手が居たらな…と思っていたところ、焼き肉の女神ことシャルロッテさんが現れた。
タイミング良く、と言うべきか。
シャルロッテさんも依頼を探していたところだと言うので、2人に下水道調査を任せることとした。
何かあっても、2人ならばなんとかなるだろう。と思って。
あまりパーティを組んだ経験は無いという2人でもあった(ついでに、アキトさんはブラックデーのキャンペーンに参加しそうなほど夜中にニンニクマシマシてた)しで、良い経験になればと思って。
上手くいってくれれば、依頼を回した俺としても嬉しいけれど。
絵画展に向かう前のこと。俺は川沿いの遊歩道でゴロゴロしていた。
準決勝を見てからと言うもの、凹んでいたからだ。
かと言って、浮かない顔のままポーアさんのところに行く気にもならず、気分転換をしていたというわけで。
うだうだ、うだうだとしていた。
其程実力に差は無いのではないかと思っていたグリンの力を見たこととか、今の自分では優勝はかなり難しいものだったのだと今更のように思い知って。
正しい認識をした。
想像、推測だけでは分からなかったことに、実証が伴ったのだった。
そこにルトナさんがやってきて、うだうだしている俺に話し掛けてくれた。
どこか、深緑の国というところにスパイに行っていると聞いていたものだから、久しぶりに会ってかなり驚いたものだ。
色々と話したかったものの、まず礼を言った。
僕がカトゥを送りに船に乗ったときにルトナさんから貰ったトルコ石は。
カトゥを無事に家族の元に送り届け、僕自身をペティットに返してくれたばかりか…ネージュのこともまた、街に無事に返してくれたからだ。
そう伝えるが、ルトナさんは何のお陰でも良いから最終的に無事ならそれでいい、と言う。
この何物にも囚われないところこそが素敵なのだと、思ったけど、この時、いつの間にか頭に花を乗せられていたらしく…絵画展に行ったときに道行く人の視線が気になると思ったんだ…。
花屋で、ポーアさんの個展が行われていた。
街中の小さな花屋での絵画展…ペティットに来てからこれまでに描いてきた、見てきた風景の絵。
小さな頃が絵が好きで、本格的に画家を志し始めたのはペティットに着いた頃からだと言っていた。
だから、花屋には見慣れたペティットの風景が沢山あった。
その展覧会には、ポーアさんのペティットを好きな気持ちが沢山詰まっているようで。
とても彼女らしい小さな絵画展。
その絵に描かれている風景にあるような花屋の中で行われていて。
旅の画家を目指しているんだと言うポーアさんの姿は、この街で始めて目にしたときとはすっかり違っていたように思える。
来客用のスケッチブックにポーアさんの絵を描いた。
ポーアさんがペティットの街を好きなように。
この街の人達は、ポーアさんの絵や、街中で絵を描いているポーアさんの姿が好きなのだから。
変わるもの、変わらないもの。
もう一つの準決勝。
2つのチームにそれぞれがあった。
ラゼットの見せた爆発的な力は、変わろう、変えようと言う意志が無ければ引き出せないものだ。
グリンの見せた剣の閃きや拳は、変わらないものを追い続けなければ成し得ないものだ。
どちらの力が優れているとは一概には言えないものだけれど、俺が負けたのはそういう力で、2つの準決勝を制したのはそういった力だったように思える。
純粋さがある。
大会が頂点に向かうにつれて、磨き上げられていくようだ。
俺はそれを見ていることしかできない。
だが、俺は今、自分の参加しない決勝戦を楽しみにしていた。
この2つの純粋さがぶつかり合う時を待っていた。
それは俺が変わるとか変わらないとか、そういったこととはまた別に。
そこには、俺が視ようとしていなかったものがあるように思えた。
俺は力が嫌いだ。
俺にとって力は問題を取り除き状況を打破する手段でしかない。
力を求める者を軽蔑さえしていた。
けれど、ここにある純粋さは何だろう。
川沿いの遊歩道。いつも体を動かしているところで、いつも通りに…ではないけれど、体を動かしていると、一匹の子犬がやってきた。
これまた可愛らしい犬で、最近、犬との触れ合いに飢えている僕は、その子を思うさま撫で回していたのだけれど…。
直ぐに、その子犬の飼い主…というかご主人様がやってきた。
ランファという子で、このショコラという名の子犬は妖精なのだと言った。
彼女は召喚術師で、この"こいぬ座"の妖精カニスミノルことショコラ君を始めとして、うさぎや子ライオンの精を召喚できるのだと言う。
子犬と戯れる明るく可愛らしい町娘のようだったけれど、その実
代々召喚士の家系であり、戦うことの得意な召喚獣と共に戦闘を行うこともあるという。
しかし彼女は、やっと1人で召喚獣との契約が出来るようになったところであるらしく、戦うことについてはまだまだ不安があるようだった。
僕からしてみれば珍しい召喚獣であり中々興味が尽きないものだったので、戦っているところを見る機会があればなと思うことだった。
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