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ファルベリアは自警団へと自首した。
結末として、それは派手でもドラマチックでも無かったけれど。
多くの人が納得できるような結果になった事は喜ばしいと言えるだろうか、それが「良かった」かどうかは、俺に分かる筈もない。
ファルベリアの罪とは何だろうか、赤禍ツに半ば操られるようにして繰り返した殺人。自分がそうであると確信した時点で自殺したり、人里離れて暮らさなかったことだろうか?
協力を仰ぎ、信頼した人物を自らの手に掛けてしまうことを恐れてしまい、単身で元凶を見つけようとしたことだろうか。
罰が罪を引き起こした人間性に対して課せられるものならば、呪いから解き放たれたファルベリアに課すべき罰などあるのだろうか。
罪となるべき行為に対して課せられるものならば、操られて行ってしまった事についても罰するべきだろうか。
どちらにせよ、ただ一つはっきりしている事は…真に忌むべきはファルベリアを「赤禍ツ」へと仕立て上げた張本人である事だろう。それは間違いが無い。
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難しい話はよそう。こういった事は、この街の者が考えるようなことだ。
国や街によって法は違う。旅人はそれに添い、冒険者はその中で(或いはそれを掻い潜って)結果を得る…良し悪しを考えるのは、悪いことではないにしても。
皆それぞれ、思うところはあったように感じるが手荒なことにならず、セシリアやファルベリアも受け入れてくれた事を嬉しく思う。
といって、俺は何もしていないのだが。(強いていえば、自警団のところに行くまでのエスコートをした)
ファルベリアの人生を滅茶苦茶にした張本人、死んでも許さない…とまでは言わないが、行った全てを明るみに出し、ファルベリアが余計な罪を背負うことの無いようにしたい。
元凶とも呼ぶべき赤禍ツが討ち滅ぼされた。
「赤い髪のエルフ、元お菓子屋さん」には見えなかったが、その場に居合わせた面々の証言と自警団に齎された情報の通り、その姿は変貌を遂げていたようだ。
どうやら、これで「感染」は「呪い」は解ける…と相対していた者達は言う。ファルベリアは赤い狂気から解き放たれたのだろうか。
ファルベリアの作戦は…成ったのだろうか。
小雨のなかでもそれと分かる匂いの充満する、町外れの公園。
俺が居合わせたのは最後のほんのいっときで、最初から交戦していた面々はかなり消耗しているようだった。
その中に商店街の路地裏でファルベリアの逃走に手を貸した二人も居た。
ファルベリアが捕まった場合、この「元お菓子屋さん」を討つチャンスが無くなったとした場合…彼女らのした事の方が正しかった、とまでは言えずとも、正解に近かったのかも知れない。
レーラさんは、指名手配犯の逃走を手伝ったことで自警団に自首すると言う。
黒兎の獣人は、良いとか悪いとかではなく、自我を貫いたまでと言う。
どちらが良いという事では無いだろう、レーラさんはこの街の社会の中で生きる事を望んで、黒兎の獣人はそうでないだけだ。
冒険者などは荒くれ者、ならず者。自警団の悩みの種になっている者も少なくないだろう。この位のアウトローは普通とも言えるかも知れない。
そのアウトローを捕らえる行動には出られなかった、この死闘を繰り広げた後の彼女にそんな事は出来ず。
彼女は社会に属さず、そういう風に生きているのだから。俺には責められない。
許せない、と一言にするとしても、俺は被害者や法または秩序の代弁者にはなれない。同じ穴の狢なのだ。
冒険者には冒険者のやり方がある、この「借り」はキッチリと返す。そのうちに。「勝つ」ことでしかこの気持ちは拭い去れない。
細かいことを気にしているとモテないらしいが。
ヨハネは身体能力は素晴らしいものがあるようだ、経験を積めば良いローグになれるかも知れない。戦いの後だったのに、自警団に人を呼ぶのを手伝わせてしまった、今度何か食べ物を奢ろう。
サロメは赤禍ツと知らずに偶然居合わせたのだろうか、そしてかなりの重症だった。傷口が炎で焼かれていて見るに堪えない。
しかし大凡いつもの調子で安心した、今度武勇伝を聞かせて貰うか。
セシリアは全身に今日だけのものでない傷を負っていた、もしかすると、「元お菓子屋さん」をずっと追っていたのだろうか。自警団に情報を提供したのも彼女であるような気がする。
ファルベリアの事を格別気にかけている様子だ、ロンとセシリアの為にも、ファルベリアが無事であれば良いのだけれど。
ミウという小さな魔法使いさん、偶然にも共闘。強力な魔法を使うエルフ…。彼女もまた「元お菓子屋さん」を追っていたのだろう。セシリアと知り合いのようだ、是非入院させて欲しい。逃げ出しそうだが。
もう一人、迷彩を施した服にゴーグルという物々しい姿の男…?賞金稼ぎと言うが、いつだか、ペタと広場でドタバタしたときの記者に似た気配を感じるのは気のせいだろうか。
そしてベリア…手を貸してくれた。
目的が同じであれば、こうして協力する事も出来る。
二度と、目的が同じなのに敵対するという馬鹿らしい事が無ければ良いのだが。
そんなとき、己の力の無さを痛感するのだ。
皆が協力しているとき、役に立てる事は幾らでもある。自分の得意なこと、求められている事をすれば良い。
しかしそうでないときは、純粋な力でしか望みを勝ち取れないことが多い。
ラピッドラビット(今日この日、最低2度は噛んで「ラピッドラピッド」と言ってしまった)を探した。
ファルベリアを逃がした彼女、「元お菓子屋さん」たる赤禍ツと対峙したと見られる彼女。会って話をしたかった。
レーラさんでは「元お菓子屋さん」の情報が無いかも知れず、セシリアはあの場には居なかった。全くの適任…という訳だ。
あのとき、一時的にでも敵対した者達との"しこり"を無くし、赤禍ツの情報を得る……やはり、俺は欲張りのようだ。
だが、やはりというか、当然と言うか。連絡の手段無く探し回っても中々見つかるものではなくて。代わりと言うのは良くないが、面白い出会いがあった。
フニカルと名乗る槍士、或いは北海のビューティフルマーメイド、転じて人生に迷った北風迷うデンジャラスマーマン、またはフニカルちゃん。
出会った場所は港の倉庫街で、夜だったが、フニカルさんは昼間から海をずっと漂流していたらしい。入り江からここまで。
ドギツイ印象ながら、強靭な肉体を持ち海中の下見をするなど経験も豊富そうに見える。
この街にはあまり慣れていない、確かに同業者なのに名前を聞いたことはなかったが…この調子だと、クラーケン退治を機に有名になりそうだ。(主にキャラが)
赤禍ツの事を色々と話した。接していると初対面なのに話易い、あのキャラは相手の警戒を解くのに一役買っている………のかも知れない。
しかし中々腕が立ちそうだ、最近はそういう者との出会いが多くて良い。
ライバルが増えたと感じるよりも、パーティを組んでみたいと思う。
クエトラツトリ、ヒュー、フニカル(全員年上に見えるが、冒険者仲間では直接先輩やトラブルの種になりそうでも無ければあまり畏まるのも妙だ)…戦士は選び放題、後は術士とヒーラーが居れば心強い。
あれ?この三人、どうにも俺より戦士としては優秀に見える。
これは困った。言い出した者、というのになるより他ないかしら。
教会まで行くが、中へ入る決心が付かなかった。
近くまで来ておいて今更…と思うかも知れないが、やはりその直前まで来ると勇気が出ない。
その恐れの原因である赤禍ツの事を思い出しながら、風が吹くのを待っていた。
良い風だろうと、悪い風だろうと。
どちらでも良いから、俺を動かして欲しかったんだ。
主体性が無い。
そのとき吹いた風は、良いものだった。
ヒューと名乗った冒険者らしき狼の獣人(夜中に狼の頭部が見えたときはやはり怖かったし、ファルベリアを連想させもした)は雨に濡れ宿を探していて、傷の目立つ屈強な体躯と鎖付きのパドロックと、まさにならず者かグラディエーターかと言った風体ではあった。
しかしその実、体から水滴を飛ばすのにも人から距離を取り、教会に宿はおろかタオルを借りるのすら躊躇う。飼い犬でもこんなに控えめではない。
だがそれも、初対面の相手にも友好的ながら人の詮索をせず、ロンを叱り勇気付け…といったところを見るに
犬のように…言い方は悪いが分かり易く言えば媚びるのではない(言っておくが犬は好きだ、犬は可愛い、犬ラブ。)、強さと思いやりによるものだと感じる。
…。
狼の姿だからと言って連想や印象による思い込みが過ぎたかも知れない。
だが、この日話した彼の第一印象はこうだった。ということだ。
非常に集団や仲間を重んじそうに見えるが…一人で冒険者をしているのだろうか。
教会を訪れていたロンとも出会った。三人で赤禍ツについて話をし、ヒューの背中を拭いたりしていたが…。
あんなに湿っぽい話をしていたのに黙って背中を拭かせてくれるヒューは心が広い、それは間違い無さそうだ。
おほん…。
ロンにファルベリアの事について分かった事が無いかを聞くと、どうやら直接会ったとのことだ。
自警団でも
「赤禍ツ」がファルベリア自身ではなく、呪いか何かを意味している
それを他人に与える事ができる「赤い髪の元お菓子屋さん」(元凶、或いは真の赤禍ツと呼ぶべきだろうか)が居る
と考えられてはいたが、ロンはファルベリア自身から聞いたということだ、ほぼ間違いないだろう。
更にロンの話を聞くと、ファルベリアは完全に赤禍ツになる事によってその「赤い髪の元お菓子屋さん」を倒し、(罪を償うというところから)その後討たれるつもりであるように思えた。
「餌を集める」「釣り針」という単語を使っていた。
赤禍ツになるため、或いは「赤い髪の元お菓子屋さん」を誘き出す為の餌か。
最終的に赤禍ツとなった自分、或いは「赤い髪のお菓子屋さん」を討たせる為の釣り針か。
知人を、友を殺す事を嫌っていた。自分が許されない事をしていると分かっているのだろう、自分の手で全てを終わらせる。
それが正しいとは思わないけれど、その強さに嫉妬すら覚える。
「やっぱり皆と一緒に居たい」「友達でいて欲しい」と言ったという彼女の胸中はどのようなものなのだろうか………。
ロンは、ファルベリアに目的を遂げて欲しいと思っているようだ。
ファルベリアの事を思うからこそ、彼女の決めた事を信じ、思うようにさせてあげたい。
そして、自分の役割はペティットを守り、ファルベリアと、赤禍ツと戦った全ての者におかえりなさいと言ってあげる事だと。
その言葉と瞳の純粋さに、俺は頷くことしか出来なかった。
もしロンに力があれば、レーラさんやあの黒兎の獣人のような事をしただろうか。
或いは、レーラさんや黒兎の獣人も、ロンと同じような気持ちなのだろうか。
君も頑張ってねと言うロンの言葉が染みて。
なぜなら俺は、ファルベリアを止めたいのだ。彼女が此れ以上人を殺めずに済むように。
彼女の気持ちを捻じ曲げてでもそうしたいのだ。
ロンの意思には、沿えないかも知れない。
それをロンに言う事は出来なかった。
道理を説いた方が良かったのかも知れない、傷つき悲しむ人達の事を考えろと…。
でも、今はファルベリアを信じるロンの純粋な気持ちを守りたい。
この事件が終わっても、ロンがファルベリアを信じていたと言えるように。
二人の、今の意思の通りにならないとしても…。
大団円を思い描き、求めることを
夢追い人たる冒険者がやらずに誰がやるのだ。
イベント事でもないのに剣を持たずに外出するのはいつ振りだろう。
マントも無く非武装なのが一目で分かる状態で。誰かを訪ねる訳でもないのに。
一日、冒険者で居ることをやめてケーキを食べに行った。昼下がりにもゆっくり時間が持てるこういう時だからこそ。丁度小雨がぱらついていて、お店も空いていそうだったし。
あの時はファリアに、「おやつタイムの主婦の皆さんと情報交換」なんて言ったけれど全くその気になれず。雨の音も聞かずにぼんやりとフォークを口に運んでいた。
でもルゥナディアさんが来て、アンリが来て、男前のサロメさんが来て。それで楽しくお茶会でもしているようになって。最初は男一人で、それもケーキが大好きで来たという風でもなくぽつんと居たのに、酒場とは違う華やかさがあるのだろう、俺が女の子だったらもっと馴染めたろうに。
アンリは居るだけで場が明るくなるようで……なんて言い方はよりも、実際に、この日はずっと俺の気持ちを明るくしてくれた。
人を泣かせることよりも笑わせる方が難しいと言う、明るい事は尊いと俺は感じる、じめじめとした俺の悩みをどろどろと聞かせられなくたって、同じかそれ以上に感謝している。
俺も明るさで人を笑わせられるようになれると良いが。
ルゥナディアとは、半ば腹の探り合いのような冗談(ルゥナディアにそのつもりが無いとすれば、それは俺の深刻な認識違いだ)を飛ばしあって。
彼女にしてみれば友達の友達にあたるアンリと仲良くなったのは嬉しかった、友達と友達が仲が良いことほど心休まる事も無いかも知れない。
アンリの方がルゥナディアよりも背がずっと高いけれど、ルゥナディアの方が年上のようだ。何だか見ていて面白い。
サロメはこの日初めて会ったけれど、竹を割ったようにサッパリとした性格をしていて話していてスカッとする。感情こそが力、感情を縛られない為の自由…。
近くにいて話していると、本当に火のようで熱される思いだ。今の俺には少し熱くて手を翳してしまうけれど、見ていると勇気が湧いてくるようでもある。
俺の心の内の何かが取り除かれた訳ではないけれど、行動する為の力は貰った。まだ少し、赤禍ツ以外へと刃を向ける事へは恐れはあるし、自信はあまり無い(それにやはり合わせる顔も無い)が…そこは誤魔化しながらやるしかない。乗り越えなければ、俺はミルフィーユ以下のスカスカ野郎だ。
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