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- Newer : 07/14 港の倉庫街にて
- Older : 07/12 食材屋「Luna Elbes」にて
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教会まで行くが、中へ入る決心が付かなかった。
近くまで来ておいて今更…と思うかも知れないが、やはりその直前まで来ると勇気が出ない。
その恐れの原因である赤禍ツの事を思い出しながら、風が吹くのを待っていた。
良い風だろうと、悪い風だろうと。
どちらでも良いから、俺を動かして欲しかったんだ。
主体性が無い。
そのとき吹いた風は、良いものだった。
ヒューと名乗った冒険者らしき狼の獣人(夜中に狼の頭部が見えたときはやはり怖かったし、ファルベリアを連想させもした)は雨に濡れ宿を探していて、傷の目立つ屈強な体躯と鎖付きのパドロックと、まさにならず者かグラディエーターかと言った風体ではあった。
しかしその実、体から水滴を飛ばすのにも人から距離を取り、教会に宿はおろかタオルを借りるのすら躊躇う。飼い犬でもこんなに控えめではない。
だがそれも、初対面の相手にも友好的ながら人の詮索をせず、ロンを叱り勇気付け…といったところを見るに
犬のように…言い方は悪いが分かり易く言えば媚びるのではない(言っておくが犬は好きだ、犬は可愛い、犬ラブ。)、強さと思いやりによるものだと感じる。
…。
狼の姿だからと言って連想や印象による思い込みが過ぎたかも知れない。
だが、この日話した彼の第一印象はこうだった。ということだ。
非常に集団や仲間を重んじそうに見えるが…一人で冒険者をしているのだろうか。
教会を訪れていたロンとも出会った。三人で赤禍ツについて話をし、ヒューの背中を拭いたりしていたが…。
あんなに湿っぽい話をしていたのに黙って背中を拭かせてくれるヒューは心が広い、それは間違い無さそうだ。
おほん…。
ロンにファルベリアの事について分かった事が無いかを聞くと、どうやら直接会ったとのことだ。
自警団でも
「赤禍ツ」がファルベリア自身ではなく、呪いか何かを意味している
それを他人に与える事ができる「赤い髪の元お菓子屋さん」(元凶、或いは真の赤禍ツと呼ぶべきだろうか)が居る
と考えられてはいたが、ロンはファルベリア自身から聞いたということだ、ほぼ間違いないだろう。
更にロンの話を聞くと、ファルベリアは完全に赤禍ツになる事によってその「赤い髪の元お菓子屋さん」を倒し、(罪を償うというところから)その後討たれるつもりであるように思えた。
「餌を集める」「釣り針」という単語を使っていた。
赤禍ツになるため、或いは「赤い髪の元お菓子屋さん」を誘き出す為の餌か。
最終的に赤禍ツとなった自分、或いは「赤い髪のお菓子屋さん」を討たせる為の釣り針か。
知人を、友を殺す事を嫌っていた。自分が許されない事をしていると分かっているのだろう、自分の手で全てを終わらせる。
それが正しいとは思わないけれど、その強さに嫉妬すら覚える。
「やっぱり皆と一緒に居たい」「友達でいて欲しい」と言ったという彼女の胸中はどのようなものなのだろうか………。
ロンは、ファルベリアに目的を遂げて欲しいと思っているようだ。
ファルベリアの事を思うからこそ、彼女の決めた事を信じ、思うようにさせてあげたい。
そして、自分の役割はペティットを守り、ファルベリアと、赤禍ツと戦った全ての者におかえりなさいと言ってあげる事だと。
その言葉と瞳の純粋さに、俺は頷くことしか出来なかった。
もしロンに力があれば、レーラさんやあの黒兎の獣人のような事をしただろうか。
或いは、レーラさんや黒兎の獣人も、ロンと同じような気持ちなのだろうか。
君も頑張ってねと言うロンの言葉が染みて。
なぜなら俺は、ファルベリアを止めたいのだ。彼女が此れ以上人を殺めずに済むように。
彼女の気持ちを捻じ曲げてでもそうしたいのだ。
ロンの意思には、沿えないかも知れない。
それをロンに言う事は出来なかった。
道理を説いた方が良かったのかも知れない、傷つき悲しむ人達の事を考えろと…。
でも、今はファルベリアを信じるロンの純粋な気持ちを守りたい。
この事件が終わっても、ロンがファルベリアを信じていたと言えるように。
二人の、今の意思の通りにならないとしても…。
大団円を思い描き、求めることを
夢追い人たる冒険者がやらずに誰がやるのだ。
2011/07/14 ユベルティ Trackback() Comment(0)
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