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六花の神殿で修練をしていたところ、パルティータさんが訪れて少し話をした。
パルティータさんは魔法で寒さを凌いでおり、というか凌いでいるという形容詞は相応しくない。それこそ、パルティータさんの周囲だけは常に一定の気温に保たれているといった感じだ。
彼女が杖を一振りすると(これは単なるポーズで魔法の発動とは関係ないらしいが)、俺の手の回りの空気が暖かくなり、此れを常に自分の周囲で行っているのだろうと。
でも、だからと言って年中同じ季節感で居るのはなんとも「見ている方が寒そう」という言葉がピッタリで、長生きのし過ぎで季節というものにも飽きてしまったのかなあ、なんて思うことだった。
(着飾って歩くような歳でもないなんて言っていたが)
そんなパルティータさんへ季節感というものを身に沁みさせてやろうと、この寒さにも関わらず露わな首筋に冷たい手アタックを成功させたのだが……
さすがは着飾って歩くような歳でもないだけあり。
もーっ! という可愛い鳴き声どころか、ゴゴゴゴと怨嗟渦巻く氷の宴の音が響いたのだった。
パルティータさんは氷を扱う魔法というよりも、物質を変性させる魔法を使うとのことだった。
要は水を氷や水蒸気に変えてしまえるということなのだけれど、それだけでなく同じ素から出来ているものであれば全く別物にすることも出来てしまうようだ。
実際、パルティータさんが俺に冷たい手アタックを返してきたときの手には水よりも何倍も冷たい液体を作っていた。
これはえーと……何と言えば良いのか、人間を水とお肉と骨とかに分解しちゃって、それを素に犬を作るみたいなとんでもない魔法だ。(さすがに此処まで精緻なことは出来ないとは思う。パンをクッキーにするくらいか?いい例えが浮かばない)
しかしそれは、錬金術と言っても過言ではないほどの術であることは間違いない。
パルティータさんの故郷では割りと普通の魔法なのか、凄いだろうという気配は無かったものの、俺は内心非常に驚いていたことだ。
その後は、ペア探しについての話をした。
パートナーに求める条件。パルティータさんはまだ誰とペアを組むべきか、実際に組めるものなのかと少し悩んでいるようだったが、俺は俺の求めるものをアピールした。
もしかすれば、パルティータさんが"その気"になってくれるかも知れないと思ったからだ、実力的には恐らく申し分ないどころか、そこを見れば此方から頭を下げても間に合うか分からない。
しかし渾身アピールした(つもりの)俺に返って来たのは「凄いなあ、私とは違うけど」というような眼だった。
違うけれど面白そうだ。久しぶりに熱くなってみるのも悪くないかも知れない。
そういう風なものが見えればと思ったが、俺にそこまでの力は無かった。
決してパルティータさんにそういったものが全くないとも思わない(大会に参加する中で、というのはあるだろう)が、1度2度言葉を交わした程度でそれを喚起させるだけのものを俺は見せられなかった。
とまあ、要はフラれてしまった訳で、この仕返しは組んでいれば良かったと思わせることで果たしたいと思う。
(しかしこの後、信じて送り出したパルティータさんがおばあさまとラブラブキリングマシーンになっていたなんて(適当)になるとは、この時の俺は思いもしなかったのだった)
ペティット近辺の川で逆流現象が見られると聞き、そこへ向かった。
リウという用務員の先生が逆流現象の観測を行っていて、それにご一緒させて頂くこととなった。
俺は今まで一度もこの現象を間近にすることが無かったけれど、これは海嘯とかポロロッカとか呼ばれているものらしく河口付近であればしばしば見られるもののようだ。
俺はその現象を間近に見て、しかもそれが良い高さになったところで飛び込もうという野望があったので、タイミングを教えて貰えたことは非常に助かった。
海嘯とのレースを暫く楽しんだが、遡るにつれて馬が駆けるよりも速くなるという波に追いつかれたところで川に飛び込み、リウさんに任された波の高さをその身に感じた。
多分これを下から上まで観測しようと思ったら、空を飛ばないと難しいのかも知れない。
地上を走る生き物では、上流になるにつれて険しくなる道にどうしても足を取られ、波に置いていかれてしまう。(猫より速いと言われる(自称)俺でもあっという間に追いつかれてしまった)
学者先生と言えばもう少し頭の固そうなイメージはあるものの、リウさんはその点でバランスの取れているように感じた。
きっと研究室を持てば学生に人気の出そうな感じの。(だがそこまでの立場になるのがまず大変だ)
そもそも、学術的な興味で観測に来たというのに、こういう楽しみ方をしている俺に嫌な顔ひとつするでもなく、川に飛び込んだ俺を魔法で乾かしてくれたり(滅茶苦茶冷たかったし)、観測していることを簡単に教えてくれたりするのだから。
(釣り人には煙たがられ、猫には逃げられる俺だ)
本当に観測しようとするならば、それなりの人数と機材が必要だと分かっているからと言って、何も言わないどころか半ば同じように楽しんでくれるというのは、学者先生という先入観を吹き飛ばすのには十分な出来事だった。
こういう人と世の中の様々なことを見ていくのは非常に楽しいものだ。
旅の道連れをするなら1人は居て欲しいような。
それはそうと、俺は引き波に乗って海にまで出てみたいのだけど、どうすれば安全にそれが叶うだろうか。
ゾンビ退治のし過ぎで気分が悪くなってきたので、郊外温泉宿に行ったところ、コールさんが来ており、話をした。
コールさんは怪我の為か調子が悪そうではあった。
怪我と、それに伴う調子の悪さ……傷から入った色んなものと体が戦っていたり、魔法や薬での急な回復で変調をきたしたり……によってメランコリックな気分になることは多々あるもので。
聞けば、連続殺人犯(話に聞くマーシレスだろう)と交戦したとのことだった。
それはヘビーな事だと俺は言ったものの、コールさんはそう思わないようだった。
人の命が懸かっていることなのだから、そういうものなんだろうと頭では分かっていると言うものか、実感の無さそうな様子。
マーシレスとの戦いは間違いなくハードなものだろうに、相対したことのない俺ならばともかく、実際に刃を交わしたコールさんがそんなふうであることはとても意外だった。
それが何故なのか分からなくて、コールさんが物事に関わるひとつの軸であろう『依頼』について聞いた。
コールさんがどういった立場からその事に関わっているかによって、その"ぼんやり感"の正体が分かるかも知れないと思ったからだ。
コールさんはマーシレスについて依頼を請けているようだったが、その内容は『捕縛』でも『討伐』でも『護衛』でもないと言った。(さしずめ『調査』か『交渉』か)
しかしその依頼も手詰まりだと言うことで……この件から手を引くことも考えているようだった。
この件について心残りは無いのかとも聞いたが、コールさんは「無い」と答えた。
しかしそれは、「依頼が終わる以上、無い」「依頼が無い以上、あるべきではない」というようなものだ。
俺の追及を自然に振り切って、その深淵をそっと隠したまま、此方に合わせたような笑顔とテンションを振る舞っていく。
相変わらず良い男だった。
それにしてもペティット近辺のスライムというのは、どうしてこう感情表現豊かでそこらの犬猫やら、どうかすれば人よりも可愛いものなのか。
マジでテイマーになるのも悪くないのかも知れない。
もしかしたら俺は、随分酷いことをしてしまったのかも知れない。
真面目にやっているところに遊び半分にやってきて恥をかかせた、の、かも………これは、ごめんなさいだ。
だが、収穫がないでもなかった。
場数が足りないというだけで、反応は悪くなく一人でも何とかしようという責任感、集中力があるし、気配り上手な様子も見て取れた。
ズルさとか爆発力とかそういったものは、今回はあまり感じなかったものの、得手不得手もある、血腥い依頼でもなければそう重要でなし、パーティを組んで冒険に出るには遜色ない力を思っているように思えた。
と色々思うのは、思ったよりデキて驚いたからだ。
だからこそやってしまった感がある。(さようなら先輩風、こんにちは変な人(これは前からか)
賭場で"Showdown"のペア相手探しのための機会があった。
店を借り切っただけのものではあったが、参加者は幾らか居た。
そのときにサリアさんが姿を見せていたのが気になって、店を出た後で声を掛けた。
俺は正義に燃えるサリアさんが賭場に来ていた理由を知りたかった。(だからカードも渡した)
自警団を、猛虎隊を辞め独自の活動をしているというが正義を目指す気持ちに変わりがないはずだ。
そんなサリアさんが大会に興味を持った理由……あるいは賞金首達が姿を表わす機会と捉え、監視などのチャンスを狙っているのだろうか?
サリアさんの答えとしては「それもある」だった。
大会への参加も考えており、その目的は大会に出場した犯罪者を正面から打ち破り、滅すること。
そして優勝をすることで悪に対し威圧すること。
ペティットに、裏側の太陽にサリアありと知らしめる。
目的は苛烈だが正々堂々、悪を決して許さず、誅し滅する様はひょっとすると炎の剣を持つ天使のようであるかも知れない
だが、それは異端だ。
強すぎる光もまた受け容れられないことがある、自警団では、猛虎隊でも、成し得ないとサリアさん自身が感じたように。
彼女はアウトローであり続けている。
それは敢えて、自覚して行っていることでもあるが、正を志すものが本当にアウトロー(外)で居たいと思うだろうか。
俺にも共感できる部分がある。
この大会の内だけでもサリアさんをアウトローでなく、正道に引き揚げることが出来るならば、きっと優勝を狙えるような力が生み出せると思った。
だが、だからと言って、犯罪者と云えども必ずその生命ごと滅するというのには納得出来ないものがある。
サリアさんは戦いの中で自分を止めて見せろと言う、強い者が正義なのだ、だから強くあろうとする。
しかし、それは不確実で、ともすれば戦闘中に致命的な隙を晒す恐れもある。
一定の答えを出せない内は、危険を孕んだまま試合を行わなければいけない。
とまれ、サリアさんには以前から取り組んでいる案件もあるようで、大会へ参加する可能性は低いようだったので、ペア探しを止めるわけにも行かないようだ。
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