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慰霊碑の崖では珍しいキノコが採れる、しかも、その場所そのものが曰くつきで、かつ魔物も出るとなればその価値は勝手に上がってしまうものだ。
そして、それを狙う冒険者というのがいて、そのうちの幾らかが実際に大変な目に遭う。
今日は俺の番だったという訳だ。
ネズミ系の小型魔物に襲われそれに対処しているうち、血の匂いに誘われガオウルフがやってきた。
運が悪いことだ。
小型の魔物に襲われたこと、それに手こずってしまったこと、血の匂いを偶然嗅ぎつけられたこと。
そして最も悪いことに、このガオウルフは人間との戦闘経験が豊富だった。
逃げようとしたところいきなり脚をやられ、最初から絶体絶命。
走ることができなくては、逃げることも戦うこともままならない、次の瞬間には「最期の」と感じてしまうような決断の時が迫っていた。
しかしそこで勘が冴えたか運が戻ったか、俺のイチかバチかの決断が功を奏し、相手が飛びかかってくることを予期し、カウンターを食らわせたのだ。
殆ど天佑のようなものだった。
特段大きなダメージを与えた訳ではなかったにせよ、奴との先手後手が振り出しに戻ったというのは実際のダメージ以上に効果があるものだ。
睨み合い。
どちらが仕掛けるのか?ほんの数秒、奴と視線で語り合う。
先手後手が無くなったとは言え、なぶり殺されるところが正面から喰われるのに変わっただけだ。
けれど何故か冷静で居られた。
必ず勝つという気持ちが、自然に決断をさせた。
奴の次の行動が分かったような気がして、天佑を我が物とする道を選んだ。
奴の自信が、矜持が、先ほど交錯した視線から伝わってきていたからだろうか。
俺は二度は使えない手に、タイミングを外せば意味を成さない手に賭け、それをモノにした。
気高い隻眼の一匹狼だった。
この強さと早さは、群れを離れ、独りで生きる中で手に入れた力なのだろうか。
その孤独な強さはファルベリアを思い出させた。
嵐の中、闇の中を独りで走る姿を。
俺はこのガオウルフを殺めることなく場を納められなかったことに対し、若干の無力感を覚えてはいたが、こいつはきっと、そのことで俺を恨むことは全くないだろう。
狩りを仕掛け、それが失敗しただけのこと。
それが自然の掟だからだ。
そんなガオウルフに敬意を表し、亡骸を手ずから葬りたいと思ったのだが……脚をやられた状態ではそれも敵わない。
何せこいつは普通の狼よりも大きく、体重も7~80kgはあるのだ。
そこへヴォルフ様(戒め)が偶然通りかかられて、お力添え頂くことが出来た。
精霊とはいえ狼に乗ってここを散歩(ハイテンションで)とは、中々突飛なことをする人だ。
(先日俺はここを叫びながら駆け抜けたことはあるが、あれは色んな鬱憤を晴らすのとお化けを晴らすのの2つの効果があったのだ)
しかしブレンちゃんのことを「マイサン」と呼んだが、子供なのかしらん。
精霊の生みの親的な意味だろうか。
そんな感じだが、亡骸を運ぶのを快く手伝ってくれたり、俺が何も言わないまでもガオウルフに「狩りに失敗したけど、頑張ったんだな」と敬意を払っていたりという辺り、とても良い人なのだろうと思う。
生き物の亡骸を眼にして「可哀想」と言う人は多く居る。
けれどその言葉に至るプロセスは人によって異なる。
生き物が死ぬのは可哀想なことだ、と教わったからかも知れない。
自分が同じ目に遭ったらと考えて、同情したのかも知れない。
人間が本能的に感じる死への気持ちを率直に言葉にしたのかも知れない。
俺のように「取り返しの付かないことは悪いことだから」と思うのも居るし、ヴォルフさんのように自然のままに思い、そこに優しさを持たせられる者も居る。
俺はこういったところに、その者の人となりが出ると思うし、それは育ちや才能なのだとも思う。
そして俺は、その全ての考え方に対し、同時に、かつ、無矛盾に立ちたいとも思う。
全ての人を理解することが出来るとしたら、それが唯一の方法だろうからだ。
とか言ってたらAIBOさんがやってきて大変なことになったが、何とか皆命も助かって、無事に街へ戻ることが出来た。
ガオウルフの持っていた魔法の指輪を、礼としてヴォルフさんにあげた。
ガオウルフを運ぶのを手伝ってくれたAIBO(名前なんだっけ)さんには、崖から落ちそうになった騒ぎと相殺して、3人でご飯を一緒に食べることにした。
多分、これは後から思ったことなのだが。
この慰霊碑の崖というのは、実際に大声を出しながら突っ走ってしまう人は結構居るのではないだろうか。
俺だけではない、と一般論化しておくことにする。
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