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風の強い日で、夜になると実に寒い日だった。
暖を求めて酒場に入ると、知人との再会あり、新しい出会いありの楽しい一時となった。
コタロウは猫科の獣人(黒)のようで、自分磨きの為にペティットに出て来てみたは良いが生活にハリがない…と言っていた。
冒険者として旅をしていると、そういった者には良く出会う。
コタロウは夢破れてゴロツキに…といった風ではないようだったが、ギルドの依頼を請けるなど意欲のある者の手を余らせて置くには惜しいとも感じ、仕事を依頼した。
コタロウは俺や時計職人の女の子(シアルフィーアさん)やジュリエッタさん、ともに初対面にも関わらず気さくで分け隔てのない様子があり…裏表の無い者のように感じた。
よしんばヨハネと直接話すことになっても、コタロウはヨハネと上手くやれるかも知れない。
ただ、ヨハネがあまり危険な事に関わって居なければ良いが……。
旅する時計職人のシアルフィーアさんは片眼鏡やカチューシャなどアクセサリーの印象的なお嬢さん。
物腰柔らかだが、旅をしているだけあってか、どこか芯の強さを感じさせる…お姉さんタイプというか。
各地の時計を見て回り、自らの技術を高めているという…ペティットにも最近やっと落ち着いたところのようで貸家を探していた。
一人なら貸し部屋で良いかと考え、商店街や学院の近くを勧めたが良かっただろうか。
離れがちだと詳しい事がわからなくていけない。
気長に探すという、良い住まいが見つかると良い。
ジュリエッタさんとはいつも思いがけず会う……いや、予定を合わせて会った事など無いのだが。
何か僕の中にやましい気持ちがあり、心構えをせず偶然会うと「不意に」という感じがしてヒヤリとしてしまう。
今回は特に、長い髪を肩ほどまでバッサリと切っていたので肝を冷やした。
黒兎の獣人との一件の「せい」でないだろう事は、少し考えれば間違い無さそうなものの…やはり幾らか「ビビった」のは間違いない。話題として触れる勇気は全く無かった。
黒兎の獣人とのこと、やはり蟠りが残っているようであったのでもう一つ問うと「逃げたくない」と言う。
「逃げずに戦え」とは俺が黒兎の獣人に言った事ではある。
しかしそれは……その必要性は、黒兎の獣人と違い、ジュリエッタさんには無いように思えた。
言わば 逃げてもいい、いっそ 逃げて当然 と言える事柄なのに。
知り合いでも友達でも無い相手に対して?
興味は募ったが、それ以上の事は聞けなかった。
一度、確りと考えなければ、ノイズが溜まっていくばかりか。
どうせ、俺の度胸の問題なのだ、全く。
吹雪の日で、身を寄せ合うのに丁度良い日だった。
人と人との間に吹く風の量を測るのに、丁度良い日だった。
事の始め、魔物との騒動があったのだけれど。
こんな雪風の日、通りすがってくれたジュリエッタさんとジャックさんのお陰で事無きを得た。
ジャックさんは狩人で、魔物との付き合い方に関して実に現実的な考え方をしていた。
しかし、俺やジュリエッタさんの意向に合わせてくれるなど、優しい人のようだった。
狩猟用の銃を持ち、実に手馴れた様子を受ける。
従についてとても詳しいようだ。
その後、件の黒兎の獣人(エレナ?)も現れて…。
俺はお節介で、余計な事をしただろう。
今思えば、二人は二人で、あのままでも、自分達で距離を掴むような気がした。
結果を急いで、苦痛を強いただけだったろうか。
黒兎の獣人の考え方は、線引きが決まっている、傭兵らしいものだ。
今回の事も「そんなの関係ない、何故気にするのか」と、言われるのかと思っていた。
しかし、現実はそうでなくて、寂しげな表情さえ見せていた。
ジュリエッタさんとは、お互いに謝ってばかりだ。
しかし、この街でなら、それも俺に限っての事ではないのだろうが。
どこまで聞こえていたかは分からないが、ジュリエッタさんも、どうしたら良いのか、気持ちの整理が付かないようであった。
黒兎の獣人の方は、こういった人付き合いが不慣れな為のように見える。
だが、ジュリエッタさんの心の内に何があるのかは計り知れなかった。
怖いだけならば、ほっとするところで。
単に「誰とでも仲良くすべき」というような「良い子」であるだけのようにもまた、見えなかった。
不思議だった。
それに、黒兎の獣人を見る瞳が、まるでその中に自分を見ているような節もあった。
この人は、よくそんな目をする。
これも不思議なところだ。
しかしながら、この場この時は、また、人をつらい気持ちにさせてしまったんだなあと思って、どうしようも無かった。
俺はどうしたって、あのときから成長していないのかな。
新年明けて、ペティットに戻ってきた。
ほんの僅かな時間離れていただけなのだけれど、年の瀬、年明けを見ずに、その余韻の残る街を訪れると…ずっと戻って来て居なかったような気さえする。
新年祝いのポストカードを配るコウノトリの着ぐるみの女の子を中心に、何人かと新年の挨拶を交わすことが出来た。(ティルカニアに挨拶するのを忘れていた)
挨拶ついでに、年越しを過ごした場所で頂いた縁起物の新芽を配り。
ただ、コウノトリの着ぐるみの女の子を見ていると、痛みを求めていた子の事を思い出した。
普通は、通り一遍に言えば、「痛いことはしない、させない」が優しさと思われようが、そうでないこともあって。
じゃあ、優しさって相手によって「合ってる」とか「間違ってる」とかがあって、人それぞれなのかって。
普遍的なものではないのかって。
ついこの間、優しさの話をしたネージュも居たものだから、つい、考えてしまった。
この間会ったときは、気まずい瞬間もあったのだが…冒険者や旅人という間柄、自然と再び会うまでには間があって。
それで、再開を喜ぶものだから、以前の些細な事を引きずる事は少ない。
だが、それは良いことでもあり、悪いことでもある。
未解決の過去は、少しずつ、心のうちに溜まってしまうものだから。
ともあれ、こうして新年を迎えられた事を嬉しく感じる。
縁起物の新芽を食べたからではないが、皆、無病息災であれば良いなと思う。
今年も、宜しくお願いします。
旅の途中、温泉街である「すずめのお宿」へと立ち寄った。
温泉と言うと、まあお湯で、冬は体を洗ったり温まるのに実に良い。
ついで、傷の治りも早まるというから凄い、街も栄える訳だった。
そして、カルディアの出身地だという事だ。
しかし肝心の店の名前を聞きそびれていて、まずはそれを探す事から始めた。
目的無く散策するのも良いものだが、目的を持って散策するのは尚良いと思う。
メリハリがあるね。
散策といっても目的があるのだからと、先ずは案内板を眺めていたところを偶然にもカルディアに見つかった。
どうもお使いの途中だったようだが、丁度里帰りをしているときに訪れる事が出来たのは全く幸運だった。
カルディアの故郷という事で訪れたのだから、本人が居るというのはこの上なく都合の良い事だった。お仕事姿も見られるし。
(お仕事姿どころか、衣替えした格好も見られて三度美味しかった事を特に記しておこう。後はパジャマだ。あ、ごめん新しい武器も見せてもらったっけ。)
しかしその家と言うのが凄いもので、この街で最も歴史ある宿がそれだった。
通常、こういった所では歴史というものは実に重く、老舗というのはそれだけでエライ。
言わば王だ、キング。
つまりそのキングの娘であるところのカルディアは、温泉街のプリンセスだと言っても差し支えない訳だ。
と、思ったのだが。
さほどの特別扱いを感じなかった、むしろ皆の娘というか何というか…街全体が一つの家族のような。
不思議なところだ、そういった歴史があるのかも知れず、興味が沸いた。
行く道々、やはりカルディアは話していて楽しい子で実に愉快だったのだが。
闘技場で修練、それも真剣での手合わせを行い怪我をしたという話には閉口しかけた。
俺自身、冒険者としてのカルディアを応援しているのだが、やはり怪我をしたと聞けば心配であった。
それに、獣人故か、「ちょっとの怪我くらいへっちゃらへっちゃら!」というように思っている節があるのが、また怪我の事だけでなく気掛かりなことだ。
広場の傍の公園。
そこで寒さに負けない子供達と一緒にボール遊びをしていたところ。
蛍光ピンク色のサンタルックのお姉さんと出会った。
サンタルックと言うか、自称サンタだそうで。(むしろ「蛍光ピンクのサンタ」と名乗っていた)
クリスマス前にやってきたのは、所謂、個性なんだそうだ。
サンタ業界も大変だ。
ともあれ、プレゼントを配りに来たのは大よそ本当らしく、通り掛ったらしいエルフのお兄さんにハリセンをプレゼントしていた。
そのときは予定があったので、プレゼントを貰う間も無くその場を去ってしまったけれど…当日のことをお願いしておいた。
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