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川で修練をし、虫の声を聞いていると森を探検中のポーアさんがやってきた。
2人で話をしていたところにネージュがやってきて、3人で街へ戻りながら話をした。
探検をしていたというポーアさんのセンス・オブ・ワンダーを試すゲームを楽しんだ。
どちらの手にコインが入っているか?というような単純なものだが、それは完全に勘でしか答えられない。
冒険者にとっては重要なことだ、ダンジョンで右の道を行くか?左の道を行くか?それによって生死が分かれることもある。
見事アタリを引いた、素晴らしいセンス・オブ・ワンダーを持つポーアさんへ「とっても香り箱ミニ」をプレゼントした。不思議な不思議なアムーガ土産だ、エスニックで海産系の。
そして、虫の声を聞いて、すっかり秋の訪れを感じていた俺は、ポーアさんに夏の思い出を聞いてみた。
スイカ割り、キャンプファイヤー、夏祭りとポーアさんは夏を中々満喫していたようで、夏祭りでは
ネージュと一緒に浴衣を来て楽しんだと言う。
2人の浴衣姿を見られなかったことはかなりの損失だと見て間違いがない、全くもって。
(ポーアさんはひまわり柄、ネージュは百合柄だったそうだ!ガッデム!!)
その後は、今やっていることをどうして始めたのかというような話をした。
珍しくこんな話をしたような気がするが……ポーアさんは幼い頃から絵が好きで、本格的に、自覚をして絵を描きたいと思ったのはペティットへ来た頃、3年前くらいからだったそうだ。
俺が冒険者をしていることについて、これだけ興味を持って貰えるというのも珍しいことだが
何よりポーアさんが話を楽しそうに聞いてくれるものだから、ついついと言った感じで舌が回ってしまう。
ポーアさんに冒険の話をすることで、俺自身が冒険をするのが好きになるというのを実感した。
それはきっとポーアさんの才能だと思うし、多くの光景を絵に残したいと思うことと共に、強い感受性の表れのように感じる。
あと、聞き上手は素敵なレディーとしてこの上ないスキルの1つだ。
虫歯治してあげたいね。(残念なことに虫歯はないらしい、ポーアのお婆さんはとても良い子にポーアさんを育てたようだ)
噂をすればネージュだったが、噂をしてもポーアさんと百合っぷるにはなっていないようだった。
(それもそうだ)
カトゥのことを話し、お土産(というか僅かだがお礼の品)を渡した。
カトゥが家に戻れたことについてとても喜んでくれたが、カトゥが居なくなって俺が寂しいのではないかとネージュは俺に訊いた。
確かに少し寂しくもあったが、良い別れ方をしたから、清々しい気持ちでもあった。
しかし、顔にでも出ていたのか?
ソレユが居なくなったら1周間はお部屋から出てきそうにないネージュに言われるなんて。
(ソレユ君は以前、コルト君という名前であったが、コルトは仔馬を示す名前であるため、すっかり一人前となった今では相応しくないとして、ソレユ君というちゃんとした名前を貰ったようだった。太陽の意だろうか?)
カトゥのことでのお礼にと、菊の刺繍が入ったハンカチを渡した。(メル・バムでは菊や蓮の花の柄が多いのだ。ティーセットは蓮の柄であった)
ネージュはとても感激してくれた……ようだったが、それがどうしてなのかは、今ひとつ分からなかった。
贈り物を貰い慣れてない、という訳では無いらしい。(そもそもネージュなら毎日だって贈り物を貰えてしまうだろう)
カトゥが大事なものをくれたから……それはラゼットだ。
菊の柄のハンカチがとんでもなく欲しかった?これかも知れない、思い入れがあったのかも。
ともかく、以前ネージュのことで良い点だと感じたこと
(プレゼントを貰ったとき、喜べばまたプレゼントをして貰えるという返報性うんたらかんたら)
を超越したものを感じ、俺は、そんなに喜んでくれて有難う、と頭に疑問符を浮かべながら言うことになった。
それはさておいて、夏祭りを期にポーアさんとネージュが(こう並べるとポーアをさん付けでネージュを呼び捨てなのは何となく妙な気分だが、此れで慣れたものだから仕方ない)仲良くなったのはとても良いことだ。
マヨヒガのことを話したり、絵を描いたり、見せてもらう約束をしたり、ポーアさんが初めて馬に乗ったり。
ソレユに乗せてもらうポーアさんと、乗馬の指導をするネージュを眺めていると、今日はとんでもなく良い日だなと思うことだった。
そこは「やぶさかでない」じゃなくて「穏やかじゃない」だろ!
というツッコミを待っていたのだが、割りと誰にも気付いてもらえなかった。
セシルさんとベリアが出所後トークで盛り上がっていたようだった。
二人共自らに架した鎖について思うトコロあるようだったが、俺が来た頃にはというか、俺が来たことでその話は区切りとなった。
教会ではそういう話は穏やかでないのか、それとも教会だからこそなのか。
どちらにせよ、2人はきっと教会の教えに沿った道を選んだわけではないだろうから、きっと穏やかでないのだ。
その後、セシリアがやってきた。
セシルさんの事は亜人狩りの頃、話には聞いていた。
便乗犯の1人で賞金稼ぎ。
今は、稼いだ賞金を街に寄付することを条件として自由の身になっているという。
亜人狩りのとき、セシリアと何かあったのだろう。
セシルさんを前にしたセシリアは憤りをなんとか抑えているといった様子であり、俺には「大丈夫だ」と言ってくれたものの、何か弾みさえあれば……と言った様子だった。
だが、そんな様子のセシリアに向かってセシルさんは歩み寄り、詫び、あまつさえその目の前で深く頭垂れた。
セシリアが、やろうとさえ思えばその首を切り落とすことが容易なほどに。
それは完全に相手へと自分の命を委ねるような謝罪ではあれど、この状況では非常に豪胆なことであり
俺は冒険者として、そのセシルさんの強さを見て取ったが、ともすればセシリアを精神的に追い詰めかねないことだと思った。
実際にセシリアはその姿を見て、セシルさんが完全に反省をし屈服したものと見て安堵するどころか
増々湧き上がる感情……こうまでされても相手を許せない自分に対する憤りもあっただろう……に苛まれているようだった。
間違った気持ちではないと言葉を掛けるには、俺は事情を知らなすぎる。
セシリアは強い。
目的を達成しようという強い意志を持っている。
だが、それは同時に弱さでもある。
人は弱さを強さに変えることが出来るが、違う方向から見れば、それはやはり弱さだ。
今のセシリアには、きっとそのことに寄り添ってくれる人もいる。
俺に出来る事と言えば、ギガトールさんからコーヒーを貰ってくることくらいだった。
森で、楠の下でラゼットがぼうっとしていた。
憔悴したというか、放心状態というか。外は強い風が吹いていたのに、風を避けるでもなくただ樹の下にいて物思いに耽っているようだった。
アムーガで土産にと手に入れてきた酒を酌み交わしながら(とか言って俺は全然飲まなかったのだが)、カトゥの事を話す。
そこへ双頭の大蛇を従えた朧菊さんもやってきて、3人で話した。
酒と聞いて現れたとしか思えない朧菊さんに、アムーガから持ってきたネップ・カムを振る舞う。
だがこの酒はミハエルさんへのお土産として持ってきたものだから、飲むなら代わりの酒をおくれと言ってみたところ、先の駆け比べの商品であった星酒をくれた。
杯を何枚も持っている(酒を注げば赤とんぼが水面に揺れる美しい杯だった)のを見て、どうしてそこまで酒が好きなのかと聞けば、幼い頃から身近に酒があったのだと言う。
朧菊さんの産まれた村の事情から神として扱われていたらしく、奉納されていた酒を幼いころから飲んでいたのだとか。(更に言えば朧菊さんは種族的にも酒に非常に強く、酔ったことも無いという)
そんな立場にあった朧菊さんが何故今、こうしてペティットに居るのだろうか、このときはラゼットとの話に集中していて聞くのを忘れたが、今度聞いてみたいとも思う。
ラゼットはカトゥをイェンスさんに返したことを後悔していた。
イェンスさんに"返した"と考え自分を騙していたが、イェンスさんその人からお前はカトゥを”捨てた”のだと
イェンスさんが元々奴隷だと言う事情を分かっていながらそうしたことに傷ついたと言われたようだった。
その上で、「罰則はないだろう」「捨てても構わない命だったろ」と、敢えてそう言われてしまって
ラゼットはカッとなってイェンスさんを殴ってしまったようだ。
そりゃ、放心状態にもなる。
俺はラゼットに人形を渡した。
カトゥから預かってきた、ラゼットへの贈り物だ。
子供が産まれたときにその成長の無事を願って贈られるもの、カトゥが産まれたときに贈られ、家を離れるときに家族に預けられていたもの。
ラゼットが奴隷商人から連れ出してくれたお陰で今が、無事に成長して家に戻ることが出来た時間がある。
家に戻ったばかりのカトゥが持つ、唯一の大切な物、とも言える物だ。
取り返しがつくのだとラゼットに報せた。
カトゥのことは終わっていない、致命的なことになってはいないのだと。
イェンスさんのことだって、まだ取り返しがつく。
ラゼットは、自分がカトゥに関わったことはカトゥにとって意味のないことだったと考えていた。
連れ出そうが連れ出すまいが、結果は同じだったのだと。
カトゥには、ラゼットに頼まれてやったことだと言っている。
ラゼット自身、自分が意図したことではないと思っていても、それを隠して、笑顔でカトゥに会いに行かなければいけない。
それはつらいことかも知れないが。
(嫌だと言っても俺は引きずって連れて行くつもりではある)
俺は仔猫ちゃん(ニ・カトゥ・アラデメヤナ)と共に、ペッラ・メル・バムへと来ていた。
カトゥの家族は今何処に居るのか?
一緒に暮らすことはできるのか?
その答えを探しに。
道中、荷車を引いた現地の人と思わしき山猫の獣人お爺さんに出会った。
この頃には俺とカトゥの意思疎通も幾らかコツを掴み、辞書への頼り方も慣れが見えてきていて挨拶もスムースではあったが
幸運なことに、このお爺さんは共通語を話すことが出来た。
聞けば、お爺さんも元のメル・バムの人であり、火災のときにペッラ・メル・バムへと移住してきたのだと言う。
カトゥと面識があったらとも思ったが、カトゥも小さかっただろうし覚えていなかったようだ。
このお爺さんにも、非常に親切にして貰った。
色々なことを教えてくれ、案内をしてくれただけでなく、カトゥにも優しくしてくれたし、ネバネもくれた。
南の国はとても温かい、そんなところへ妙な制度を持ち込むのは大抵他の国だ。
種族が違うからと差別をしているから、出来る事なのだろうが。
カトゥの両親は火事とその後のゴタゴタで亡くなってしまっていたが、兄弟達はペッラ・メル・バムへと移住しており、そのうち何人かは結婚をしていた。(カトゥは4女だった)
兄弟たちはカトゥの帰りをとても喜んでくれたし、結婚をして生活が安定をしているお姉さんの家でカトゥも一緒に暮らすこととなった。
「こんな良い格好をさせてもらって」
とは、再会をした後のお姉さんの言葉だが、このときに初めてジュリエッタさんからの贈り物にはこういった意図もあったのかと気付かされた。
急にカトゥを連れてきた俺のことを疑うこと無く受け容れて貰えたのも、このお陰だったと言える。
それから数日の間は、男手の必要な仕事を手伝わせてもらった。
カトゥが新しい……此れから暮らしていく環境に馴染めないこともあるかも知れないし、ひょっとすると、お姉さんの旦那さんに疎ましく思われたりしないかと思って、念の為に滞在をした。
礼にと、来客用のティーセットやら何やら、明らかな家財道具を持ちだされたのはとても困ってしまうことだったが、受け取ることも大事なことだ。
それに俺だけの力で此処まで来られた訳ではない、報酬は分ける必要がある。
今回の件は、とても幸運なことだった。
元の故郷や両親は失われていたにしても、待っていてくれた人が、受け容れてくれる人が居た。
目的の場所に辿りつけなかったり、全てが失われていたり、追い返されたりしても、不思議では無かったのだから、これ以上望むべくもないことだ。
カトゥは、本来あるべき時間に戻った。
奴隷商人や俺達に奪われていた時間を取り戻すことが出来た。
だが、俺はこの子を軽視していたのかも知れない。
ラゼットへとカトゥから人形を託されたときにそう思った。
元々は、奴隷商人から逃げ出そうとしていた子なのだ。
交渉のためとしていたラゼットからは分からないが、俺からは逃げようと思えば逃げられたはずだ。
それでも付いて来て、つらい現実に跳ね返されるかも知れないと知りながら此処まで来てくれたことは
カトゥがただ大人に振り回されているだけの子供ではないことを示していた。
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