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「向こう」から連絡が来ていた、今一度話し合いのチャンスをくれる…という事だった。
向こうもこのまま全面戦争状態に突入するのはリスクが大きいのか、ユキギエさん個人の考えなのか…どちらにせよ、有難い申し出だった。
戦うにしても今でない方が良いとは、お互い思っているのかも知れない。
僕一人で来いとのことだったが、目的は状況把握のようだからブラッキーさんに同行してもらう事にした。(そしてそれは了承された)
そのまま、落としどころの交渉に持ち込むつもりだ。
というのを、この日、ブラッキーさんとミカに伝えた。
ミカには付いて来いと言ったり付いて来るなと言ったり、手間を掛けてしまって申し訳無く思う。
本職は博打うちだと言うが、最近の事はミカにとって受難も良いところだろうか…。
ブラッキーさんはミカの事を「人のことばかり」と言うが、確かにそういう風にも見えた。
そのうちミカにもお鉢が回ってくるかも知れない、それまでは「お互い様」だと思おう。
亜人狩りについて、今までに代わる体制についても話し合った。
「向こう」とは全面戦争になると思っていたから、船にでも構えて迎え撃つつもりではあったが…交渉の余地ありとなってはどう転ぶか分からない。
長期化ないし離脱を見据えて、矢面に立つ者、情報を扱う者を交代しておくのが良いと思った。
と、話した内容が内容だけに、纏めも事務的な感じになっている。
ミカには色々と迷惑を掛けてしまっている(気にするなと言われようと礼儀の問題だ)
俺に出来る事は、交渉(笑)を精一杯やることだけだ。
決裂した場合に精一杯やる為の秘策(笑)もある。
このような形式で競い合う機会などは無かったので、この日得たものは多かった。
闘技場で行うのとはまた違う、より「依頼」などの「任務を遂行する」形に近かったのは、非常に良いものだった。
ミハエルには頭が上がらないかな?
しかし、最後は一人でおっ被って、怪我までして。
全く全く、らしいと言えばらしいか。
不穏な空気を感じてフォローに向かったが、遅かったようだ。
程度は不明だが、向こうに此方の事は知れてしまったという(後で分かったがバレットさんが既に行方不明となっていた。侵入者に結界が反応した形跡は無し、自ら出て行った…?)。
さあ、緊急事態だ。
この事態を招いた原因は、記憶の消去を拒んだ俺にもあるだろう。
肚を括って、どうするか考えて居た。
兎に角、ブラッキーさんの安全を確保し、追っ手を討つこと、それだけを。
だが今回は違った。意外なところから…文字通り「助け舟」が表れた。
ミハエルという男。貿易商で名高いリール商会の次期当主。
ジュリエッタさんが隠れているのも此処の関係なのだから、何かしら深い関係があるのだろう。
いや、助け舟が「表れた」というのは間違いか。
俺達はブラッキーさんと共にミハエルの持つ船を「奪おう」としている。
(此処では無粋な事も言い放題なので確りと記すが、これは同意の上だ。奪う形式なのには違いないが)
ブラッキーさんが一人で背負おうとした。
俺が責任を持つ者だけで処理しようとした。
ミハエルが、ミカが、ラファティが力を貸してくれた。
俺の責任の取り方は割と「引かれる」方なのだが、今回、肚を括っても括ってもそれを実行に移せた事は無い。
世界が俺に興味が無いからだと、思っていた。
………
……
…
こうなる事は止められなかった。
けれどまだ終わってはいない。今回の事も、亜人狩りの事も。
ユキギエはどういう思いで居るのだろうか。
図々しくも、まだ話し合いの余地があるようにも思える。
何とか、やってみるしか無いだろう。
この日、夜、手紙を携えたアーシャが戻ってきた。(夜でもある程度眼の利く素晴らしい子だ。俺の所に戻ってくるときは、大凡存在を感知できるのでずっと楽なようだが)
迎え入れようと窓を開けたら、窓枠に「閣下」が居た。
「閣下」は俺に何か恨みでもあるらしく、手に触れようとしてきたのだがアーシャから不思議な術が発動し、それを防いだ。
けれど俺は勢い余って窓から飛び出してしまい、そのまま落ちた。
落ちるときにアーシャを巻き込みそうになったので帰還させた。
大きな怪我は無かったが、手首足首を痛めたし、背中を打ったし、植え込みに飛び込んだので切り傷を作った。
(シルヴィアに口止めもしていないようだし、此処まで嘘八百にしなくても良いようなとは思いつつも、約束を重く捉えていることと幾らかの洒落っ気でこうなったようだ。)
ジェイ捜索の最中に不審な男を見つけた。
黒いローブに黒髪、白黒反転した瞳を持つ隻眼、隻耳の男。
後から推測した事だが…この男は恐らく広場でのジェイとの戦闘を視ていた。
恐らくそういう魔術の類、あの不吉な瞳で。
人の心をもある程度見透かせるのか、俺から対亜人狩りメンバーの名前も盗んで行った。
闇、光、炎の術(高位のものではなかったが)を扱い、黒いシールドのようなものを発生させる術も用いた。(俺の中ではこのイメージはジュリエッタさんの使うあの術、で通るのだが…)
重要な位置を占める者(報告に聞くアウトレイジェスなどに比べればの印象だ)には見えず、熱心な下っ端といったところと見える。
その相手に対し剣を鈍らせ情報を奪われ…全く、使えない男だ、俺は。
自分の意志を通したいから、凡そ組織と言うものに属さずに冒険者として旅をしてきた。
それなのに結局やってる事は同じ、気の弱い性分がまた出ただけの事か。
精一杯やっていないんだ、俺は。
この男しても、やっている事が世間的に悪だとか、方法が悪いとかだとしても自分の為に自分の意志で精一杯やっているのだ。
実力も無いのに自分を偽るから苦しいのか。
………
……
…
ジェイが討伐されたらしい。
幸いな事に深刻な怪我を負った者も居ないようだ。
路地裏の巨大壁での事でブラッキーさんから連絡が来ていた。
あのとき居た紫の髪の男…どうやらきな臭い人物だという事らしい。
口止めの交渉の席を設けたいとの事だが…事情が今一つ不明で慎重に行きたいが中継しているブラッキーさんに手間を掛けさせるのも悪いと思い承諾する。
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