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この日の俺はモンスターだった。
◯ッションモンスターだった。
とにかく、そういう仮装をしていたわけだ、ハロウィンだから。
そんな日に樽と錨亭に来たのは、仮装をしてハロウィン限定メニューを楽しむだけではなく、「樽と錨亭」がコルフォーティス杯のスポンサーになってくれるとの話を頂いたからだ。
曲がりなりにも、委員長なのだから出向いて話を伺うのである。
しかし、予定の都合上ハロウィンという樽と錨亭としても忙しい日を指定してしまったのは、全くもって愚策だと言わざるを得なかったが。
エマさんの話では、大会中の飲食物販売をやらせて欲しいとのことだった。
此方はスポンサー料と引き換えにその権利を売り、樽と錨亭は飲食物の売上で利益を得る、とそういうわけだ。
此方としても願ったり叶ったりな話で、2つ返事でOKをし、その日のうちに観客動員数の目標だとか、限定メニューの話し合いに移った。
食べ物も飲み物もないお祭り会場はつまらないものだ、誰も売りに来なければ、俺が自前で用意しなきゃならないところだ!(勿論それは不可能だ)
樽と錨亭には、他にも冒険者も何人か訪れて。
イグナイト・フェニックスというカッコイイ名前の何でも屋は、大きなカボチャを頭に被っていた。
その大きさたるや、かぶったままでは扉を潜れないほどである。
三十路で自由に生きている男で、ミスリルとオリハルコンの調達を頼まれた依頼では、別の硬い鉱石を持って行ったり。
餓死寸前だったために、格闘家に殴られ続ける依頼を請けたりしていたらしい。
なんとも、なんとも、とても真似できないという点では凄まじい生き方をしている人だ。
コールさんという、気のよさそうな冒険者も居たのだが、此方は仮装をしていなかった。
大会にも誘いたかったし、同業者として興味もあったのだが、時間の都合上すれ違って挨拶するくらいだったのが悔やまれる。
言い出したくせに、スポンサーなんて集めたことも無いのだから、どうなることかとは思っていたが。
動き出してみれば案外と何とかなるものなのかも知れない。
案ずるより産むが易し、と、いうことか。
まだまだ、開催の準備は順調とは言えないが、気合の入る出来事だった、大会が、自分の気持ちの中のものだったものが、実現可能なものだと信じられた。
この日はライクルスとミカの誕生日会だった。
ラファティ君がラファ子ちゃんになっていたり、甲斐性についてじっと考えてみたり、小さな贈り物のプレゼント交換をしたり……。
色んなことをして色んなことがあって、色々と話して。
闘技場での馬鹿騒ぎも、酒場での宴会も、どちらも良いものだ。
パンプキンガールの声も聞くことが出来たし、とても良い日だった。
この日はアイニィさんとチンピラとハレンと、その他現地の観客たちと馬鹿なことをやっていた。
それはもう馬鹿馬鹿しいにも程があったのだが、男が何人か集まればこんなものだ(あれ?アイニィさん…)。
しかし、呪いのハレンチチンピラスラッシュをこの身に受けられなかったのは残念だ。
例え結ばれない定めとは言え、37人もの相手に愛されることが出来れば人としてはこの上ない。
子供は産まれないかも知れないが、随分幸せに暮らせそうなものである。
広場でドタバタしていたら、ポーアさんに嫌われてしまった。
この世の終わりだ!!!!!!!
でもポーアさんの虫歯を治せるってだけで歯医者に嫉妬出来るよ。
頭から蔦が生えたりしたけれど、ポーアさんに嫌われてしまった事に比べればなんてことはなかった。
しかし、そのあとの事は、それを差し引いても中々ハードな事態だった。
草原で、三角獣の訓練を行なっていた。
ライダーに角を折られ、角が再び伸びてくる季節となったからだ。
少しずつ走らせて調整しておく必要があった。
そんなとき、遠くで馬の蹄が激しい音を立てた。
何かあったのかと様子を見ようとしたが、これがいけなかった。
俺がペティットに来た頃、同じように草原で三角獣を走らせていたとき危険な者達に遭遇してしまったものだ。
この草原がとりわけ危険という訳ではないが、この草原に居る時の俺は運が悪いのだ。恐らく。
ベラン三兄弟という、知る人ぞ知る賞金首達だった。
普段から、こういった草原を1人でほっつき歩いている者を寄ってたかって襲い、追い剥ぎをしているケチな賊なのだろう。
と、言ってしまうのは簡単なのだが、この時の俺こそが「1人でほっつき歩いているアホ」だった。
普段の状態なら、スピードは駿馬にも引けをとらない三角獣も、時期が悪い。
あっと言う間に詰め寄られ、矢を射掛けられる。
矢はなんとか捌くことが出来たが、三角獣はスピードを出そうとすればヨロけてしまう状態で、とても逃げられるものではなかった。
単に走っては逃げ果せられないのなら、活路を拓く他には道がない。
俺は戦う決意をし、馬首を返した。
逃げる隙を作れそうな「アイテム」が、先程まで居た岩場に置きっ放しだったからだ。
そこまで辿り着ければ、逃げるチャンスはあると思った。
三兄弟の長兄、大剣の男の攻撃をかわし、その馬の影へと隠れて次男の弓矢、三男の鉤爪に追い打ちされぬようアイテムへと向かう。
狙い通り、長兄の馬を盾にすることで矢による攻撃を防ぎ、アイテムを回収する事ができた。
しかし、三男は実に身軽で、盾にしている馬へと飛び移り攻撃を仕掛けて来たことに、俺は気付くことが出来なかった。
アイテムを得て、右腕の自由と剣を失ったことになる。
俺は三角獣に飛び乗って、先手を切ってスタートする。
出来るだけ距離を稼ぎたかった。本調子ではない三角獣も、俺の期待によく応えてくれて、出来る限りのスピードを出してくれた。
逃げるためには、ベラン三兄弟にもトップスピードを出して貰う必要があったからだ。
トップスピードを出したベラン三兄弟の馬にマジックジュエル(ルース、この間リール商会の赤札市で買ったものだ)を投げつけ、馬を驚かせて乗り手を落馬させる。
これが俺の描いていた作戦だった。思った通り、長兄を先頭に、トップスピードで追いかけてきてくれていた。
俺はその作戦を実行し、そしてそれは半ば成功した。
しかし、相手も仕掛けてきていた。
「トリニティベラン」というフォーメーションのようだ、そのときは次男が先頭に来るようで、俺はそのことに気が付かず、長兄だけを見てしまっていた。
気付いた時には次男が鋼のワイヤーで俺を捕縛しようとしており、俺はそれに体全体を封じられぬように対処するので精一杯だった。
傷を負った右腕を絡め取られ、馬上から地面へと叩きつけられる。
その直後に、馬を捨てた長兄が跳びかかり大剣での重い一撃を狙っていた。
俺はなんとか、アーシャの力を借りてそれを凌ぐ事が出来たが、一歩間違えれば腕を切断されていてもおかしくは無かった。
しかしその後も、腕を封じられ傷や落馬のダメージのある状態で、元気ハツラツな三男と戦わなければならなかった。
いや、戦っても勝ち目は薄かった、長兄には不意打ちで通じたアーシャも単体では戦闘力は無いし、三角獣も今は戦える状態ではない。
ナイフも、アイテムも投げ、剣も遠くに落としたままだ。
絶体絶命をかわした後も、状況はさして良くなっていなかった。
魔法を試すしかない。
バウンスノーバウンスと名付けた、俺の小さな願いを実現するための力。
俺に足りない、先に進むための力。
本当にヤバイところだったが、なんとか乗り切ることが出来た。
新しい魔法のお陰もあったが、1人ひとりの練度がそこまで高くなかったのは不幸中の幸いだったのだろう。(「ジェイ」相手には1対1でさえあっさり土をつけられたのだ)
3人を行動不能に陥らせ、逃げてきたのだが……「顔は覚えたから覚悟しろ」だなんて、再び遭遇しないよう祈るばかりだ。(だがそうなったとき、次はもっとずっといい形で勝とう)
落とした剣も回収することが出来た、創一さんに打ってもらった物だが、耐久性が高いだけでなく、落としても落としても回収不能に陥ることがない、不思議なことだ。
それにしても、俺の甘さが響いた戦いだった。
三男の力量を見誤り、自らの策に溺れてピンチを招いた。
もっと柔軟に、冷静にならなければ。
剣も魔法も、頭も心も、もっと鍛えていかなけりゃ。
こんなことでは、情けがない。
(なかったことにするときに引く線)
ライクルスがとんでもなく不運なせいで、なんだか体の中身が入れ替わったり元に戻ったり、腐った皆様に色んなことを言われてしまったような気がするが、全然全くそんなことは無かったに決っている!!
魔法じゃないんだから!!!!
(なかったことにするときに引く線)
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